2006.06     トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA

●06.06.28 東京クロニクル
 彷書月刊の最新号は最近の古本屋さんの特集で、中央線沿線に増えてきた狭いスペースに厳選した古本を置く傾向のお店が紹介されていますが、そこにも登場した阿佐ヶ谷の風船舎さんに行ったら、地域に関する本のコーナーがあって、私はタクシーに乗っても年配の運転手さんから「空襲でこのあたりは丸焼けになって、私の家も灰になりましたよ」とか「この通りを都電が走っていてね」なんて実際にその道筋を通りながら昔の話を聞くのが大好きなので、池田弥三郎「銀座十二章」と和田誠「銀座界隈ドキドキの日々」、朝日新聞「下町」を買いました。
 「銀座界隈〜」は、美大を卒業した和田さんが銀座のデザイン会社に通勤していた9年間(60年代)の回想録で、同じ頃やはり銀座で働いていた横尾忠則・宇野亜喜良両氏との交流をはじめとした様々な個性や才能との出会いの中で和田さんが自分のスタイルを作りあげてゆく様子が、飾り気なく描かれています。その中で以前、タコシェでもお取り扱いした「海の小娘」という横尾忠則・宇野亜喜良共作の絵本の話が出てきます。二人が赤と青でイラストを描きわけ、付属の赤と青のセロファンを使うと単著の絵本にも見えるし、使わないと共作を楽しめるという仕掛けで、まだ本を出していなかった和田さんは、出版、共作、仕掛けどれをとっても羨ましく思う一方で、すでに宇野さんはこの時点で自分のスタイルを確立していたが、横尾さんは飛躍を予感させるものがあったという説明も加えています。これを読んだとき、横尾さんの著作リストにこの絵本が入っていないことが多いわけ、納得できました。そのように淡々とした青春の記録だけど、ものを作る人の気持ちや事情が押しつけや言い訳などなしに書かれているのでした。
 和田さんは銀座でお勤めをしている間に、キャノンカメラの新聞広告に廃止される都電の写真を大きく使ったことを書いていますが、「下町」の中に都電の章があって廃止の経緯が取材されていたかと思うと、四丁目界隈を“尾張町”と呼ぶ人もいまはいなくなったという後書きに呼応するように四丁目に生家があった池田弥三郎は当たり前に尾張町と書いていて、同時に買ったバラバラの時代の三冊が繋がって、本で東京の地層を見るような気分です。

●06.06.27 演劇ナヴィ--プチクリ
 演劇は、映画と違ってプレビューが殆どないので、何か観たいと思っても判断の拠り所が少なく、まるでパドックはあっても実際に走ってみるまで結果がわからない競馬に匹敵するギャンブルと同じ(「観てよかった!」と思えるお芝居に当たるのは本当に万馬券を当てるようなもんです)。そんな中で、これは、と思えるメディアにフリーペーパーの「プチクリ」(A3判四つ折り)があります。お芝居の中でも、特に新しい方法を提起する注目の作家や劇団を特集形式で紹介しています。現代演劇の流れの中で、その作家や作品がなぜどのように新しいのか、相対的、歴史的に捉えたうえで取材に臨んでいます。
 たとえば、演劇における身体性やセリフのの観点で---客席に向かって語るいかにも芝居臭いセリフの発し方を脱した(平田オリザ、岩松了、宮沢章夫らに代表される“静かな演劇”)後、リアルに日常会話を構築したその先に何ができるのか…と考えた場合、たとえばチェルフィッチュの岡田利規の場合、話をしていても的確に伝えられない不器用や不自由や不満にまで目を向け、伝えられない会話に付随するぎこちない身振り手振りを演劇として提示する、その身振り手振りがちまたの多くの様式化してしまったダンスパフォーマンス以上に現代の身体性を描いている、という新しさがあると思うのですが、そういう類の演劇表現のフロンティアにいつも注目しているのが「プチクリ」だと思います。というわけで演劇鑑賞のナヴィにオススメです。タコシェのフリペコーナーに置いてます。ちなみに最新号の特集はポツドールです。

●06.06.26 文字力2---NU2号
 インターネットやブログの出現は、それまでミニコミをはけ口としていた個人の表現欲求の受け皿にとってかわり、タコシェの店頭からもコピー誌はぐんと減りました。となると、小出版に残るものは何かといえば、PCや一般流通書にない造本・装丁、紙へのこだわり、あるいは、携帯やパソコンのブラウザで見るにはヘヴィな圧倒的な文字情報ということになります。「NU」は、後者で、10時間にもおよぶ対談を、ムダ話や疲れてダレダレになってきた様子も含めて収録したりして、普通なら話すそばから消えてゆく会話を目でじっくり追うという、微積分作業をごく自然に読者に委ねてしまう、そんな作りになっています。これこそ、圧倒的な文字量のなせる技!
 創刊号では黒一色の表紙に小さな文字で登場する人物の名前と宇宙の星々を散らした稲垣足穂の『人間人形時代』的な表紙で、ストイックで潔かったですが、2号目はエディット力やデザイン力が格段にアップして、対談という形式や言葉や文字の表現で雑誌を作るという意図がよりシンプルにデザインに反映されています。巻頭対談の二人の人名がいきなり表紙を飾り、そこからもう対談が始まっていて、裏表紙には巻末対談の結びの会話が回り込んでデザインされている。文字力を強調したデザインだと思いました。
 洗練と、原点である「人間人形時代」の杉浦康平的な計算されたカオスの間で、この本がどのように内容や形を変えてゆくのか興味はつきません。
 NUの巻頭対談は宇川直宏×佐々木敦、巻末対談は細馬宏通×岸野雄一です。

●06.06.23 文字力
 毛髪力、おかず力、決定力と何にでも「力」をつけるのがはやっていますが、林哲夫さんの『文字力100』(みずのわ出版)は、本の函や表紙や背に配された文字に喚起される物事を自在に綴った読み物で、タイポグラフィや装丁の本ではありません。林さんは画家であり、同人誌sumusを編集・発行する読書人ですが、むしろデザイン評からも書評からも漏れがちな、文字にまつわるこぼれ話を集めた本です。林さんが集めた本の中から100冊を、見開きごとに書影入りでご覧に入れつつ、ときには、その本の中の印象的な一節が引用されていたり、別の本では昭和のはじめ文学へのロマンを持って出版社を立ち上げた青年のあまりにはかない人生が語られていたりして、文字に喚起されて、林さんの頭の中のひきだしが開けられ、様々な階層から本にまつわるエピソードが披露されます。シンプルな造本&ハンディな新書判とあわさって、その本の接し方に親しみを感じます。

●06.06.20 ホルモン
 私は20代なかばまで、厳密に肉とホルモンの区別がつかなかった。なぜなら、わが家では「焼き肉」と称して、食卓に鉄板を置いてホルモン(ばかり)を焼いて食べたり、冬場はもつ煮込みをよく作っていたからです。肉屋さんに頼んで刺身用のレバーも取り寄せ、ときには家でレバー刺しも食べていました。なので、大人になって焼き肉屋に行くようになってからメニューを見ても「表面的な肉しかないなぁ…」と思い、店員さんに「マメはありませんか?」などと聞いていたのです。
 そんなわが家の「肉=ホルモン」事情を、畸人研究学会の今さんに話したところ「ご実家はどのあたりですか? はぁ、下町の方ですか」などと興味を持たれました。畸人研究学会が発行する学会誌(?)「畸人研究」では『しみったれ家族』の特集もあって、このテーマで単行本も上梓しているので、私はてっきり我が家も「しみったれ家族」にエントリーされるのか…と不安がよぎりましが、実は焼き肉とホルモンの本を執筆してらしたのでした。その焼き肉ホルモン系食べ歩き本『がんがん焼き肉もりもりホルモン』(ちくま文庫)が発売されました。タイトル通り、忙しい仕事の合間に今さんががんがんもりもりホルモンと焼き肉を食べ歩き、お店やメニューを紹介しています。
 ひところ、女性の間にももつ鍋がはやったりしたけど、お料理の本を見てもホルモン系のレシピはまだまだ少ない、特に日本料理では。豊かなな食生活とmottainaiスピリットの実現のため、われわれの次のステップはぜったいにおうちホルモン! みなさんもご家庭でホルモンを食べてみてはいかがですか???? お子さんの生物の勉強にもなります!

●06.06.19 レジェンドどくだみ荘伝説
 79年〜94年の連載当時はあまりに人気で、単行本を買うなど考えず、いつでも喫茶店や床屋などで読めるものと思っていた「独身アパートどくだみ荘」。結局、ちゃんと読んでなかったわけですが、単行本42巻分の本編+続編・番外編の中から選んだ作品を一冊にまとめた「レジェンドどくだみ荘伝説」が出たので、はじめて意識的に読んでみました。
 阿佐ヶ谷の安アパートを舞台に、世間がバブルにわきかえる時代に、無頼なフリーター生活を送る堀ヨシオの青春物語。作者・福谷たかし氏はこの作品で単行本売り上げ累計500万部というヒットをとばしながら、連載が長期化するに従って行き詰まり、長期連載の宿命マンネリズムを水戸黄門的な黄金パターンに定着させるのをよしとせず、失速し、若くして亡くなってしまいます。
 放埒な青春物語の裏の、作家の苦悩や人生を取材して編まれた選集。作品を再び世に送り出す一方で、作家の実像にせまる記録をあわせた、作品+人方式の構成に「編集」を感じました。
 あとから聞くところによると、構想から出版まで長い年月をかけて、関係者への綿密な取材から作家や作品の研究行ったようですが、そうした作家や作品への思い入れは一切語られることなく、作品の選択や年譜など言外に反映されています。見たかんじはシンプルだけど、ページをひらくと気迫が伝わってきます。

●06.06.16 ころころにゃーん
 トムズボックスの店頭で、長新太さんが赤ちゃん向けに描いた本「ころころにゃーん」を手にとったら、ついつい全部読んでしまい、最後に声を出して笑ってしまいました。ただ猫たちがじゃれ合っている様子を描いているのですが、最後がずっこけギャグみたいな無邪気なお話なのです。この本は長さんがなくなる10日ほど前にしあげた作品だそうで、鮮やかなピンク一色で描かれています。長さんが亡くなってほぼ1年。没後も、こうして本が出ていますが、今度、青山のビリケンギャラリーでトリビュート展(長さんの絵と彼を慕う作家たちのトリビュート作品で構成される合同展)もひらかれます。

●06.06.12 世界を相手にたたかう
 ワールドカップがはじまりました。ワールドカップによる経済効果ははかりしれないものがありますが、それはあくまでサーカーにかかわる業種内の話です。タコシェが入居している中野ブロードウェイはオタクが集うビルのように紹介されることも多く、この期間もサッカーとは無縁な人々がいつもと変わりなく集まり…と思いきや、4年前、日韓ワールドカップの日本の試合のときにはビル全体に人気がなくなり、我々にとってのマイナス経済効果を実感しました。私たちのジーコジャパンやロナウジーニョやベッカムとの闘いもひっそりと開幕しました…。

●06.06.10 お尻stになろう!
 整体の観点からすると骨盤の動きを柔軟にすると体調が整いやすいようです。確かにパソコンなどで目や脳を酷使して運動不足でストレスの多い現代人は頭の使いすぎで足腰がおろそかになりがちです。春川ナミオさんの絵は頭の中で生み出されたお尻妄想が表現されていて、なおかつ顔でお尻を受け止める顔面騎乗スタイルがたくさん出ており、頭もお尻も大切にされています。肥大した妄想と同じにたわわなお尻はどこかユーモラスでもあります。考えが煮詰まったときは、お尻に答えを聞いてみよう!お尻ストになりましょう。画集「聖女の臀堂」もできあがりました。鉛筆画の濃淡がよく印刷に出て、二色づかいの赤色も原画に近いかんじに仕上がったと思います。

●06.06.08 メールのお返事
 私は携帯でメールを出すことがなく、パソコンをたちあげてメールを出すので、メールはパソコンがついているときだけ。しかし、携帯のメールに慣れたお客様にとって、メールの返事がすぐに来ないのは、もしかしてすごい待ちぼうけをくっているような気分だったりして…? お急ぎのご用はお電話でお問い合わせいただけるとありがたいです。また、お電話ではすぐにお答えできないことや店頭にお客様がいらしているときなど十分な説明ができないこともあるので、用件によってはメールやファックスにしていただけるとありがたいです。

●06.06.05 メタボリック歌謡祭
 腹まわりが男性では85センチ以上、女性では90センチ以上になると、高脂血症や高血糖などの危険が高いメタボリック症候群に入るそうで、多くの中年がメタボリックゾーンに入るようです。胴まわりの数値によって突然つきつけられる健康問題! 突然死の恐怖! しかしマイナスばかりに目を向けていても仕方ありません。テノール歌手がいい体格だったりすることからおわかりのように、メタボリックなお腹からは惚れ惚れとする声が出ます。そこで身も心もはち切れそうな中年によるメタボリック歌謡祭を開催してみてはどうでしょうか。会場には熱唱=ラスト・ソングになりかねない危険を抱えた出演者たちのために美しいナースも待機し、歌う前には胴回りや体脂肪率を測定してくれます。そうして、「96センチ、30%、○山×夫!」などと名乗って十八番を思い切り歌う。子供にはマネのできない大人の遊びです。


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