2005. 12     トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA

●05.12.19 チャンバラ劇画の大御所、植木先生登場
 店員の大西に「植木金矢先生は知ってますよね、あの、チャンバラ劇画の---」と言われ、時代劇スターのポスターや劇画を集めた作品集『チャンバラに魅せられて 植木金矢の世界』を思い出して「ああ!はいはい」と返事をすると、「最近、劇画の単行本を何冊か出されているんですが、新作なんですよ!」と言う。待てよ…、植木先生が描いていたのは嵐寛寿郎や阪東妻三郎、戦争を挟んでのスターたちである。先生ご自身もかなりのお年のはずでは…、「新作? いったい、おいくつなの?」。すると大西「でしょう! 80才を過ぎてらっしゃるんですがお元気で、ここ2〜3年で何冊か劇画を出されているんですよ」と言う。それは「スゴイ!!」
 お年をとってもお元気でいらっしゃる方は多くても、創作分野で新作を発表し続ける方は少ない。漫画の世界では、『消えたマンガ家』ではないが、短期間で燃え尽きてしまう人も少なくない。その中で、自らモチベーションをあげて、創作を続けるのは偉業と言わずして何と言いましょう。枯れることのない創作力はいったいどこから、どうやって…? 簡単にわかることではないのでしょうが、憧れのパワーに皆様と一緒に浴すべく、植木先生の原画の展示やサイン本の販売を1月下旬に行います!
 なんと、先生のご厚意でカラー色紙のプレゼントもできそうです。(一連の商品をお買いあげの方の中から抽選で)

●05.12.14 タナカタナ夫展
 ラフォーレミュージアムのタナカカツキ君の「タナカタナ夫」展に行きました。「逆光の頃」など、京都の自然を背景に展開される少年の世界を描き叙情派漫画家!としてデビューしたタナカカツキ君ですが、その後、CGで未来都市として国分寺を表現したり、最近では「オッス!トン子ちゃん」で女の子版いなかっぺ大将のようなコミックを描いても、オリジナルTシャツを作っても、表現方法は変われど、一貫して青春!青空!なイメージが大好きです。今回の展示でも360度ぐるっと頭上を取り囲むスクリーンに青空と緑が広がり、そこにパンダちゃんや極彩色のインコたちが群れていたり、不思議なキャラクターが往来していて、本当の自然の中にいるよりもニルヴァーナなかんじで素敵でした。キレイに光る糞をたなびかせながら遊泳する金魚の巨大映像などもあって自分が水槽の中にいるような気分に浸れ、美術館ならではの大きさを使った作品が楽しかったです。

●05.12.12 フリペ 西荻ののLIFE
 西荻ののLIFEはイラストレーターのののはらつららさんによるA4判の紙を四つ折りにしたフリペ。手前の緑色のが岡本太郎特集、奥が和田誠特集です。その作家と自分的な、出会いの作品、影響を受けた作品、お気に入りなどを紹介して、マイ太郎観、マイ誠観を展開していますが、手前は岡本太郎の立体作品を思って飛び出す絵本形式になっていたり、和田誠特集ではそのタッチをまねて似顔絵を描いたりで、作家それぞれの作風に敬意を表して、刷り色やレイアウト、仕掛けが違っています。その作り込み方、絵本を手にとるような楽しさがあります。

●05.12.10 もはやコスプレは当たり前?
 川崎の本屋さんprogettoで本棚の上やお店の空間に渡した紐に飾り付けられたミヤタケイコさんのぬいぐるみの展示を観てから、横浜トリエンナーレへ。アジア系の作家がたくさん出品していたり、似顔絵描きや漫画家コメディアンなど、美術家とは違ったポップカルチャー系の作家が多数いたのも印象的でした。扉に描かれた漫画の筋を追いながら迷路を歩くSOI PROJECT(タイ)のブースでは、部屋に入ってはじめて小さな空間に区切られた迷路だとわかり、閉所恐怖症の私は、脱出するのに精一杯でウィスット・ポンニミットの漫画を追うどころじゃなかった。ニットのコスチュームを着てのピュ〜ぴるさんのパフォーマンスを観てから、夜はオールナイトのライブイベント「電動のメリークリスマス」での物販へ。ほかの女性の売り子さんたちはメイドさんや女王様の格好をしていて刺激的でした。うーん、私がそういう格好をするわけにもいかないし、今後、どうしたらいいのでしょう!? 

●05.12.07 古くて新しい写真の雑誌
 創刊されて間もない写真誌「グラフィカ」は、写真(モノクロが中心)と文章で構成されていますが、民俗学者の宮本常一の大量の記録・資料写真から選んだ多数の写真を巻頭に掲載していたり、70年代の風呂敷のある風景写真(小さい頃、マントにして近所の子たちと遊んでましたが、同じような子供の写真が…)など、ファッショナブルな写真とは違った写真が多数扱われています。編集しているのは写真家の方々なのですが、対象への知識が浅いまま表現に走った写真を撮るプロの作品よりも、対象への造詣の深さから撮られた専門家の写真の確かさにもっと注目しよう、という思いから、非写真家の写真も積極的に掲載してゆくプランなのだそうです。技法に走らずにしっかり対象を撮る、あるいはそうして撮られた写真に意図せず写った時代や日常を観る。オシャレな写真集とは違った趣ですが、最近の写真にちょっと違和感覚えていた方はぜひ手にとってみてください。

●05.12.06 いわゆるバックパッカーものでないインド
 柴原三貴子さんから、本を出版したお知らせをいただき、久々にお会いしたい気持ちもあって贅沢にも訪問販売していただきました。本はインドに長期滞在した日々を綴った「ムスリムの女たちのインド」(木犀社)。実は彼女がインドへ行っていたことや写真を撮ることは聴いていましたが、電気も通ってない村のムスリムの家庭に長らく暮らしていたとは知りませんでした。
 日本で当たり前に大学に行き、写真を始めた彼女が、電気がないだけではなく、10代半ばで親の決めた許嫁の元に嫁ぎ、ひたすら夫に仕えるムスリムの女性の中に入り、当初、前時代的な不自由さに違和感を覚えたものの、まもなく、その環境や風習の中で誇り高く生きる様子を折りに触れ感じます。慈しみ育てながらも、赤ちゃんや子供や働き盛りの青年が病気などで亡くなってしまうことがどこの家庭にもありうる日常、居候の彼女を家族のように迎え入れ金品などの見返りを求めない一家、同じ村にムスリムとヒンズー教徒が暮らしながら互いの宗教を尊重して長年家を往き来するつきあい方…愚痴をこぼさず、運命を受け入れ、知恵と誇りももって生きる様は、かつて日本にもふつうにありながら今では見失われたもののようで、共感すると同時に失いつつあるものの尊さを思わずにいられません。
 装丁の菊地信義さんによって、どんなときも身だしなみを整えた女性たちの衣裳が美しいカラー写真が加わり、柴原さんが持っているインドの可憐な小花模様の布地からおこした表紙の花模様が目にとまるよう普通の本より若干チリが多めにとられた造本も、ムスリムの女性たちのように控えめでいながらしっかりこの本の存在を支えています。

●05.12.05 地方発の冊子が楽しいのは…
 カボチャドキヤもそうですが、最近、地方都市が面白いです。大都市ではなくて、地方の古くからの町。カボチャドキヤ王国のモデルである門司もそうで、著者のトーナスさんは寡作ゆえにつましい画家生活を送りながらも、地元の古い建物の保存運動に力を注ぎ、本の中に町の昔ながらの雰囲気を留めるのでなく実際の町づくりにも貢献していらっしゃるようです。
 リトルマガジンの世界でも地方の商店街や名所、産物にスポットをあてたものが最近面白い! 単なる観光ガイドやお店紹介はネットや雑誌にまかせて、そこで暮らす人が実際に歩いたり口コミで集めた情報を丁寧に取材してまとめている点で読み応えもあります。さらに民芸、デザイン、エディトリアルなどの情報が全国に行きわたり、ある地域発信の冊子がどの地方でも読める体裁や内容を持つようになったことも面白い冊子が出来ている背景にあるのかもしれません。盛岡で作られている「てくり」も、そのひとつで、今回は歴史を持ちながら、三宅一生にも素材を提供し、オリジナルに小物も作っているホームスパン工房を訪ね、その仕事への取り組み方やものを産む背景を丁寧かつ楽しく紹介しています。
 もっとも、これは単に地方都市が元気だ、ということではなく、札幌、仙台、名古屋、福岡と各エリアの大都市がのきなみリトルトーキョー化し、それより小さな都市や町にも画一化の波が押し寄せる波打ち際で、むしろ自分たちの町を見つめ直そうという動きの現れでもあるような気がします。

●05.12.03 カボチャドキヤ
 目白のポポタムは、ギャラリーを併設した本屋さんで、既存の本や小さな出版物から見逃しがちな魅力を提示してくれる素敵なお店で時々立ち寄ります。今は、トーナス・カボチャダムスさんの「カボチャドキヤ」(石風社)にあわせた、版画の展示中です。この本は、トーナス氏の暮らす、カボチャドキヤ王国の名所案内で、木材建築やビヤ樽、ピース缶、うんこなどがカボチャ様式にデフォルメされた建造物として描かれ、説明が付されています。すべて空想の産物かと思いきや、「傘の大学病院」とか、本当にこういう名前の傘修理のお店が門司にはあって、お店のおじいさんや建物トタンのかんじをそのまま残しながらカボチャ様式にしていたのです。お店番をしていたサワダさんは、夏に門司に行って町を歩いてトーナスさんにお会いしたといって、そのときの写真を見せながら、絵に対応させて説明してくれました。空想と現実の入り混じる不思議な王国、いつまでも迷い込んでいたい空間です。
(写真:カバーをとると表紙は緑、見返しや扉は黄色のカボチャカラー)

●05.12.01 リトルマガジン鼎談
 彷書月刊の次号の特集がリトルマガジンということで、小出版やミニコミを扱っている、神田の書肆アクセス、新宿の模索舎、そしてタコシェの三店での鼎談を行いました。扱うジャンルは同じようでいて、置いてある本や売れる本がかなり違う三つのお店。特に、市民運動が活発な時期に、その活動を広めるための会報やミニコミ類を中心に扱うことからはじまった30年ほどの歴史を持つ模索舎は、チラシやフリペに近い印刷物でも資料として積極的に扱っていたりして、ネットの時代にあっても今でも紙じゃないと入り込めない場合というのを紹介してくれて、それが「ううーん、なるほど!」とすごく納得ゆくケースだったので、詳細は今度の彷書月刊を見てください。

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