2005. 11     トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA

●05.11.21 中野マジカルツアー
 週末にせまったロマンポルシェ。と行く中野マジカルツアー。何かふだんと趣向の変わったイベントを…と言ったときに、ふとロマンさんが口走った思いつき企画といえば思いつき企画だったのですが、手順やポイントを詰めようとするうちに、根が真面目なのだか凝り性なんだか慎重なんだか、掟さんがリサーチやらシミュレーションを重ねて準備に余念がない!タコシェ周辺の小宇宙を歩きまわり、お約束の販促イベントや余興じゃない、その日限りの新ネタといってもいいパフォーマンスになりそう。規模こそショボいけど、ネタはいい! いつも中野に通っている私でも、改めてリサーチしたり立ち寄る先々に挨拶や打ち合わせに行ってはじめて知って感心することが多々ありましたので、ご近所の方も来ていただければと思います。DVDももちろん見ていただきたいのですが、このツアーをたくさんの方に見てほしい!。 当日までにタコシェでDVDをお求めになれない方は、お電話でご予約とツアー参加のお申し込みを。

●05.11.10 ニシヘヒガシヘ
 本田祐也のCD『ニシヘヒガシヘ』は、99年から彼が26才で急逝した2004年まで5年間のサウンドライブラリーといえる作品集です。ちんどん屋さん的な路上に活きる音を、現代的手法でブラスアンサンブルに発展させたその楽曲は、短いピッチにたくさんの音を厚く詰め込みながら走り抜けるようにワイルドかつ軽やかに演奏され、そのテクニックと力技に興奮してしまいます。最初に何も知らずに聴いたときは、東西の音楽に精通した熟練プレイヤーの演奏かと思ったので、現代音楽の分野でも「現音作曲新人賞」や「佐治敬三賞」を受賞し将来を嘱望された、若き才能の創作・演奏と知り二度驚きました。
 特別な折り畳み方で開閉する紙のジャケット、曲ごとのイメージにあわせたイラストや写真を配しクレジットや覚え書きなどを記したカードの数々、そんなつくりにも、逝ってしまった才能や残された作品への思い入れが伝わるような気がします。

●05.11.09 森繁で休む
 図書館に関する情報や問題をとりあげる専門誌『ず・ぼん』。ここに私は図書館に全然関係ない本の紹介記事を書かせていただいています。最新号のテーマは「森繁」。現存する最古の役者といっても過言ではない森繁は壮年期に大型ヨットを所有し、進水式には宮様や政治家など各界の有名人を招き楽隊でもてなす大スターぶりを発揮。庶民的なキャラクターでいながら、今日の芸能人とはスケールが違うスターの感覚で呈する苦言や蘊蓄は、深みがあると同時に微妙にワンマンで…妙味です。
 この夜は、『ず・ぼん』の、編集者と執筆者が集まって家庭的な雰囲気で打ち上げ。図書館に関わる方々、出版に関するジャーナリストら先達は、意見を交換したり議論に熱中していましたが、その中で私の書評がなぜ図書館に関係ないテーマばかりなのかという意見が、批判としてではなく、謎というか不思議として出ましたが、箸休めと思って、気楽につついていただければ幸いです。

●05.11.07 
 羅針盤やDMBQのドラマーとして活躍していたチャイナさんが海外ツアー中に事故で急逝されました。羅針盤は店内BGMでよくかけているのですが、私は直接の面識はなく、しかし身の回りには親交のあった人も多く、その人たちの沈鬱な面持ちに私も言葉を失います。羅針盤のCDをBGMにそっと一日を送るだけ。たまたまいらしたお客様が「この曲は何ですか?」とお尋ねになったので、「羅針盤というバンドです」と答えると、お客様は棚差しになった羅針盤のCDの中から一枚を選んでレジに出されました。そのタイトルは『会えない人』でした。この先も彼女の音楽が新しい観客と出会い続けますように…。

●05.11.06 色単〜竹熊健太郎さんの原点
 『色単』の再発を記念しての竹熊健太郎さんサイン会。竹熊さん20代前半の、初の編集本であり(友成純一さんとの共著)、エロ用語の語意と用例をジャンル事に分けて並べただけ、しかし、パソコンなどない時代に、それのために半年もの歳月を注いだ若さなくしてはとうていできなかった青春の書…。今日の漫画やおたく系の著作とはまたちょっと違った傾向のお仕事ゆえに、集まったお客様も長年の竹熊さんファンでいらしたり、子供時代に『サルまん』を読んで漫画に開眼したなどという、コアな方々で、小一時間ほどの催しでしたが、濃ゆい交流が実現いたしました。

●05.11.04 セレブを見る
 代官山に辛酸なめ子さんの展覧会を見にゆく。セレブをテーマに、リゾートでのセレブの様子を取材した雑誌記事よろしく、セレブに扮した辛酸さんの写真が壁に多数貼られていたり(作り物の乳首をシャツの下に仕込み、ことさら強調した格好でジョギングするも、先生の純和風の風貌とやはりどこか和風の景色がうら哀しさを醸し出す)、セレブ好みの絵柄を模写したりコピー&ペーストした特製Tシャツ、誰でもセレブになって撮影できるヅラと衣裳と書き割りのセットが用意されていたり…でした。スペースは小さかったですが、様々な設定でのなんちゃってセレブ写真や、セレブにつきものの贅沢の蓄積=セルライトの検査を受けた結果公開など、セレブウォッチャーらしく綿密な仕込みを感じた展示でした。

●05.11.03 北欧--フィンランド
 フィンランド政府観光局が毎年ひらいているフィンランド・カフェ。フィンランドのお料理・お菓子から、テキスタイルやファッション、食器や雑貨、インテリアまでを約一ヶ月週替わりでいろいろと紹介する。そこで配布される新聞のクイズは、マリメッコのテキスタイルの古典的パターンの写真とタイトルを対応させるものだったり、椅子とそれを作ったデザイナーを結びつけるものだったり。なんとなく解きはじめたら、全部知りたくなって、調べるうちに、だんだんにクイズを離れて楽しくなってきたりして。自分が実際に見ていたウッディでシンプルな椅子は、フィンランドデザインのパチもんだったんだなぁ、などと納得。タコシェでは北欧デザインに関する本も扱っているが、渡部千春「北欧デザイン」シリーズ(全三冊・プチグラ・パブリッシング)は、図版も多く、デザイナーへのインタビューなども盛り込まれて入門でもあり集大成的なデザイン本。

●05.11.02 あばらかべっそん
 八代目桂文楽の晩年の弟子だった柳家小満んが師匠の思いで出を綴った「わが師、桂文楽」が『べけんや』(河出文庫)というタイトルで文庫化されたのを読むと、文楽の姿形について「何と品があって、美しくて、神々しいんだろう」「世の中にこんなにもすてきなお年寄りがいたのかという思い」「どの噺家とも別ものの姿形に、うっとりと見ほれてしまっていた」と、まあ出てくる出てくる。さらに具体的に「黒紋付きの着物に袴で、両手で白いハンカチと扇子を重ねるようにして持ち、それを袴へ当てるようにして、いかにも低姿勢な形で、静々と現れ、一瞬うしろから鈴をつけた座敷犬でもついてくるような、そんな錯覚でもしそうな雰囲気なのであった」と。
 私はもっぱらテープで文楽を聴いていたのですが、このお座敷犬の喩えに、神々しくも軽やかで華やいだ雰囲気が伝わり、久々にテープを聴いたり、「べけんや」と同じ文楽の戯れ語『あばらかべっそん』(旺文社文庫)なる自伝を読み返してみました。そこには、人の立場や苦労を思いはかった潔いというかさばけた行いが、様々なエピソードにちりばめられていて、お店業にも通じることが多く、私までもが弟子気分。さらに、あんな若々しくて快活な「つるつる」も今聴くと、実に悲哀ある噺であったのだなーとその余韻に浸ってしまいました。

●05.11.01 半径1メートル内の新発見を探して…
 ネットで世界中の情報が収集できて、たくさんの輸入ものの店もあるこのごろ。タコシェに何ができるのだろう、と考えたとき、すでにあるのに気づかなかったものや身近にありながら新しい視点からまったくこれまでと違って捉えられたものを発見したり、紹介できれば…と思うのですが、まさに、そんな作品が納品されました。漫画家の武富健治さんが胡蝶社名義の個人出版で発表してきた一連の作品がそれです。読書好きで、本を通して様々な人生を知る思春期の少女から見た、従順で平凡ゆえに男受けする級友の性を、情念的かつ冷淡に描いた「シャイ子と本の虫」など、まるで通勤・通学電車で隣合わせた特にイケてるわけでもないお兄ちゃんや女学生の心の奥底に澱む妥協やら打算や妄想やら本音などを拡大鏡で見せられるようなそんな筆致です。ささいな現象を、韓流以上に起伏に富んだエモーションで描くとでもいうか…。漫画における様々な実験やテクニック、方法論が出尽くしたかに見えた現在、正統的といおうか愚直なまでの描写によって、こんなに心情を抉りだすとは!という驚きや発見のある作品です。ぜひお手にとってみてください。


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