2005. 8.      トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA

●05.08.20 漢(おとこ)の課題図書
 30代、40代の人なら男女に関係なく『巨人の星』『あしたのジョー』などを通して一度は梶原一騎が体を通過しているといっても過言ではあるまい。すでに梶原一騎がこの世を去って久しいが、自伝漫画『男の星座』に見られる、歴史を作る出来事の渦中に身を置きながら、自身の熱い想いと事実とを織り交ぜた虚実のアマルガム、主観的ドキュメンタリー形式は最近では浅草キッドの『お笑い男の星座』などに脈々と受け継がれている。
 奇しくも、数年前にこの『男の星座』をリイッシューした道出版系の松文館社長・貴志元則氏は劇画「密室」がわいせつコミックとみなされ、拘留&裁判を経験したが、その記録を出版し、またかつて自身が描いた劇画を自らの原点として同時に世に送り出した。ここにも、また一騎イズムが…。
 知的なイメージがある出版の世界にも荒ぶる魂はそこかしこに。子供のひきこもりや若者のニート化が問題となっている昨今、ぜひ、夏休みの課題図書を見直して、梶原を加えて、強い子供を育ててほしいものです。

●05.08.18  サムライfromインド
 タコシェにヒンディ語版の「血だるま剣法」が入荷しました。これは、漫画家・山松ゆうきち先生がインドに渡り、なんのツテもない現地で出版にこぎつけた奇跡の書です。先生とヒンディ版出版の経緯などの詳しいことは前号のアックス誌のインタビューを参照していただくとして、この本はとにかくスゴイ。やれ、出版不況だ、読者離れだと、シケた日本を後にして、10億人の読者がひしめくニルヴァーナ=インドに乗り込んだ先生は、孤軍奮闘、現地でおよそ漫画に縁のない邦人の大学院留学生を巻き込み強引に翻訳を行い、インド読者のため、本来のページの繰り方の本のほか横書きに合わせて反転させたバージョンを作るなど、本作りに邁進します。流通に関してもノウハウを持たない先生ですが、本ができるや、怯むことなく、食品マーケットの一角に本を置いてもらい、独自の販売経路を開拓します。せせこましい、販売戦略や市場調査などに惑わされることなく、潔く放たれたサムライ魂! なぜ本を作るのか、そこに読者がいるからではなく、俺がいるから!てな調子で無差別出版テロとでもいう勢いでスパイシーな褐色の地に放たれたサムライの書は、インド人が発見した「0=虚無」に漸近しながら、ガンジス河を渡りニルヴァーナへと吸い込まれてゆくのでした…。が、そのうちの一部は海を渡り、サムライなきサムライの国・日本に到着し、海外に飛び出したサムライの冒険を伝えてくれるのです。版がずれ印刷が滲み、表紙のPP加工もはがれてベロベロヨレヨレになった満身創痍のサムライのような本をぜひ手にとり、その魂に共感してください。

●05.08.16  日本各地の本が神田にいながら---
 神保町すずらん通りにある書肆アクセスさんは、地方の出版社や小規模出版社の書籍の流通を手がける地方小出版の直営店で、お店には各地の特色ある本がたくさん揃っているほか、自費出版物もお取り扱いしていますが、8月15日から9月あたままで、古本に関する多数の著作を持つ書評家・岡崎武志さんセレクトの本棚を展開しています。アクセスでお取り扱いの本の中で岡崎さんのアンテナにひっかかったもの(岡崎さんご自身がこの企画をきっかけにアクセスをよ〜く見て発見した本もあり)を16冊選び、入り口近くの棚に平積みしています。オススメ本をお求めのお客様には、16冊それぞれへのレヴューを綴った小冊子がオマケ(写真)でもらえます。さっそくお買い物をしてしまいました。

●05.08.14  草花とお友達に包まれた世界
 東京都現代美術館で開催された「ねむの木のこどもたちとまり子展」に行ってきました。ねむの木のおともだちの絵は、まり子さんへの思慕の現れであったり、あるいは大きな画面に小さな草花が何千もの草花と学園の友達が緻密かつ均一に描きこまれた絵だったり。そんな細密な絵からはすごい集中力を感じますが、人にも小さな草花にも等しくふりそそぐあたたかな眼差しが感じられます。どの絵も他者との関係や自分をとりまく人や自然といった大きな繋がりを描いたものが多く、「俺が、俺が」といった自己表現とは違った、広ーい世界を感じました。
 最終日だったので、ねむの木の皆さんの合唱もあり、宮城まり子さんもいらしていてサインをいただいたりして感激。学園の様子を撮った写真も展示されていましたが、まり子さんや子供たちによる壁画やタイル加工がいたるところにあって、私にとってねむの木学園はディズニーランドよりファンシーに見えました。今度は藤森照信さんのプランによるドイツの石づくり風の建物ができるらしく、中には養老先生の昆虫コーナーなどもあるようです。

●05.08.10  リトルマガジン、最近のひとつの傾向
 大橋歩さんの『Arne』以降、商業誌でもない、かといってミニコミという手触りとも違う、人や暮らしを見つめるリトル・マガジンが出てきているようです。『暮らしの手帖』的なコマーシャリズムにくみしな視点、あるいは世界的なLOHASな感が方などとあいまって、シンプルかつ紙やフォントなどの素材にまでこだわった冊子が出てきました。最近入荷した『日々』もどちらかといえばそうしたリトルマガジンの流れに入るのだと思います(活字を使った部分があったりもする)。今後もこうした女性を中心に作られる冊子は出てくると思いますが、そうした冊子の課題は私のこだわりが他者とどれだけ共有できるか、共感できるか、というあたりかと思います。グッド・ヴァイヴレーションが生まれるとよいですね。

●05.08.06  少女世界を席巻するエロ絵師たち
 夏、肝試しの季節だからというわけじゃないけど、少女向けホラー雑誌「ホラーM」が熱い! 三条友美、早見純といった、少女向け漫画に無縁と思えるような作家さんが登場し、しっかり恐怖漫画を描いているのです。エログロという言葉の通り、エロとグロはSMプレイやスカトロプレイをあげるまでもなく相性のよい取りあわせ。三条先生は肢体を切断された究極のSMプレイかおしおきのような恐怖世界を描き(先頃、単行本「犬になりたい」にまとまりました)、鬼畜系の早見先生は意外にもエロぬきの正統少女ホラーに挑戦してます。来月9月発売の10月号ではこの両先生が登場の予定。少女でなくとも今、目が離せないコミック誌のひとつです。

●05.08.03  都市経由の地方発信
 ちょっと前に書いた『高知遺産』もそうですが、地方発のユニークな本や雑誌が目につきます。新入荷の『てくり』は盛岡の「ふだん」を綴る本というキャッチで、テクテクあるく速度でゆっくり盛岡のモノや人、・事を紹介するゆっくりペースの冊子です。都心の川と違って、緑豊かな河原の残る中津川の周辺のカフェや、かつてそこにあった市民のレジャーランド「サニーランド蛇ノ島」(花やしきや荒川遊園に通じる遊園地です…)を取材したり、地元の素朴な食堂やレシピを訪ねています。そこに紹介されている人たちを見ると、ずっと盛岡にお住まいの方もいるのだけど、盛岡から一度都会に出て再び戻ってきた人、あるいは都会から盛岡を選んで定着した人も多く、そんなことからも単に地方発の雑誌というよりは、盛岡と東京の往復や関係の中から生まれたり認識された地方色というのが感じとれます。地方発信の本や雑誌の新しい視点を感じます。

●05.08.01  味わい深い…ドリンク
 タコシェを入ってすぐのところになんとなくある段ボール箱。我楽堂といいます。無造作にグッズが放り込まれてますが、あるときは、子供に交通事故の悲惨を教育するために作られた人体バラバラ人形(教育的意図が伝わりきれずにドリフの首チョンパ人形のように不評を買って瞬く間に消えてしまったレアグッズ)、あるときはビデオ「リトルトーキョー」ばかりをドカッと、といった具合に店主ミキジ君がどこでどう知ったのか、面白いと思って集めたグッズが、時々入れ替えられながら、紹介されているのです。
 普段は、自身のwebでこれらを披露しているのですが、タコシェに一箱だけの出店を設けて、実物を並べて、お店に来る人たちに「どうぞ、一緒に笑ってください!」という具合にプレゼンしているわけです。一見、がらくた、その実、ミキジ君独自のリサーチにひっかかったヘンテコグッズですので、ちょっと手にとってみてください。
 今、お取り扱いしているのはB缶飲料。地方の飲料メーカーが、カスタマイズして作った、すごい絵柄の缶飲料(の缶)を特集してます。
 よく見かける飲料キャラにどこか似たよーなアニマルキャラがついた果物味のドリンク、さだまさしがプリントされたお茶…。どれもこれも都会の生活では得難い、味わい深い、おらがドリンクたちです。中身でなく外側をじっくり味わってください。

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