2004. Oct.      トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA


●04.10.31  歌う決算
 10月下旬は決算で、例年通り、申告書類を作成するために連日、データを集めて集計するという作業に追われていました…。私が作業に専念できるよう本来はお休みの日に店番に出てくれた店員や私にかわっていろいろと作業をすすめてくれている税理士さんを見れば、好きなトッド・ラングレンのコンサートに行きたいなどとは喉元まで出かかっても言い出せず、夜の店でひとり作業をしながらCDをかけてトッドと唱和し、時々、歓声を送る。食事も作業しながら弁当、10時間以上コンピュータに向かっていたらエコノミー症候群や過労死になりそうなので、叫んだり歌って少し血液循環をよくした方がいいとは思ったのですが、やはり虚しい…そしてただのやばい女(午前3時半、隣近所に遠慮なく歌えます。)
 今年度もなんとか決算を終え、タコシェが営業を続けてこられたのも皆様のおかげとしみじみ、感謝の気持ちがわいてきました。ありがとうございます。

●04.10.27  ぬめり草
 辛酸なめ子先生の新刊「ぬめり草」が発売になった。多忙を極める辛酸先生だが、アイドル、オカルト、流行と、相変わらず膨大な情報を作品に盛り込み、そのクオリティをしっかりと保っている。コンピュータを駆使して創作しているにもかかわらず、その手描きの線はヴァイタルな痕跡にあふれ、単にAとBを結ぶ線ではなくA A' A''という無限の痕跡の集積とでもいおうか…。最近はバラエティ番組への出演、その人物にスポットをあてた本の発行など、辛酸先生のキャラクターに注目が集まっていますが、娯楽と繁栄の象徴?森ビルを「メメント・モリビル」と呼んでしまうその視点で読み解いた世界をじっくり鑑賞したいと思います。

●04.10.20  転売したら死ぬよ
 根本さんから納品された絵の裏には「転売したら死ぬよ」というメッセージが書かれていました。作家さんから直接、絵を預かり、売る立場の私にとって、転売は正直、頭の痛い問題です。その作家さんの作品が好きで、その一部を手元に置いて眺め、眺めていればもうそれで幸せ…というお客さまと作家さんとの橋渡しができればよいのですが、ときとしてごく一部、転売を目的に絵を買う方もいらっしゃるように見受けます。
 売り物や商品として出される以上は避けられないものかもしれませんが、作家さんの中には作品を大事に持っていてもらえたら…という気持ちでお求めやすい価格設定を希望される方もいらっしゃるし、ほかにも希望されていたお客様がたくさんいらっしゃる場合もあって、そういうときは、作家さんやその絵を買えなかったお客様の立場を思うとやりきれない気分になります。
 皆さんに安く絵をお分けできればよし!とばかりは言ってられないわけで、なるべく皆さんにお求めいただけれるように高すぎず、かといって転売するくらいに安すぎない値段を提示するのは、お店にとってかなりの思案どころとなります。一球入魂じゃないけど、一点一点に勝負をかける気持ちで値段を考えるのは、絵を預かる以上、引き受けなくてはいけない仕事です。
 絵も身近にあると生き物と同じで、自分の部屋を見ても、店にずっと置かれているうちに愛着がわき不憫になって買ったものもあれば、今は亡き人の落書きのようなかわいい絵もあり、思いがけずいただいたものもあり、私が買って手元に置いておいたのが、そのモデルとなった方の死によって作家さんの元に戻り亡き人とともに灰となり天に召されたものもあります。絵もそれぞれ作家さんから生まれて後、運命やドラマを負ってそこにあるわけで、命あるものと同様に、どうか手元で大事にして、ともに暮らしてほしいと思います。

●04.10.19  嵐の夜に
 根本敬さんが、かねてからの約束通り、作品をたくさん作って納品に来てくださった。「これから行きます」と唐突に電話があり、雨の中、大荷物を抱えての登場。当初、伺っていたよりも作品数も多くすばらしいものばかりなので、ちゃんと整理して、新刊にあわせてフェアとして組み直すことにしました。立派な展示として仕切り直しますので、皆さん待っていてください。
 大量の作品を制作しテンションがあがっているところにきて、台風の到来…、根本さんはどこかハイになっていらしたのだろう…。ちょっと前に外出し戻ってきたばかりの私がすぐそこにたてかけておいた傘を持って、嵐のように立ち去ってゆかれた。傘がなくなった私は、根本さんが取り急ぎ買ったと思われる、置き去りにされた折り畳み傘を失敬することにした。閉店後、もろもろの作業を終えて一人、店を出て傘をさすと、それは骨から布部分がはずれた破れ傘であった…。近づく台風、心もとない傘…、荒れる空に向かって「も〜お、根本さ〜ん」と叫びたくなる切ない夜であった…。作品も皆様の心を嵐のようにかきたたせてくれること請け合いです。

●04.10.18  演劇のフェイドアウト
 近頃よくあるジャニーズなどのタレントを主役に据えた芝居が舞台として成立しているとすれば、いわゆる演劇はとうになくなっていたのではないか…というような問題提起を太田省吾さんがなさっているのを受けて宮沢章夫さんがwebに文章を書いてらした。宮沢さんは来年の公演に向けて、いくつかのプレ公演や上映会を行ってきたが、それは単に本公演という一つの目標へ向けての経過報告といった直線的な歩みではなく、むしろ本公演までどれだけ迂回して経験や情報やテクニックを共有し作品に奥行きを作れるか…という試みのように見受けられる。奇しくも大人計画も次回は久々に劇団員だけの本公演を打つというし、その伝でいえば、本屋にしてもタレント本やらヨン様、ハリー・ポッターなどなどに頼らずにいかに成立させうるかというのが課題になるような気がする。私も随分変わった芝居の観方をするようになってしまったが、(これでも以前は演劇のレビューや紹介記事をいろいろ書いていたのです…)、どこから眺めても、宮沢さんや松尾スズキさんの試みは刺激的なのである。
 さらに、書くべきこと、書きたいことなど何もないという不毛の地、辺境(世界の中心から一番離れたとこ?)から文章を書き続けている、というか分泌している中原昌也さんもまた、私にとって今もっとも刺激的な作家です。

●04.10.17  宇野亜喜良さんの風呂敷
 神田の古書会館で行われている古本屋さんたちのイベント、アンダーグラウンドブックカフェに行く。古書展に展示や上映会、トークショーなどが合わさった楽しいイベントで、謄写版の印刷の実演や展示、草間彌生の作品展、鈴木清順監督を招いてのトークなどなどがあります。もちろんカフェというくらいだからコーヒーも飲めます。初日に行った理由はこのイベントのために作られた宇野亜喜良さんの風呂敷が目的。前回のUGBCではみつばちトートさんと共同で作ったトートブックが出たのだけど最終日に行ったら売り切れていてとても残念だったので、今回は早めに。無事、白地に青の線画が描かれた美しい風呂敷を手に入れ、西秋書店さんと少しお話をする。私は森繁が好きで森繁本を集めたいと話し、西秋さんはライト・パブリシティやサンアドなどがデザインを手がけた漫画読本の魅力を本を手にとりながら丁寧にお話してくださった。

●04.10.15  綾さん
 円盤にゆくと、古本のところに小沢昭一がトルコ嬢の綾さんをインタビューした「ドキュメント綾さん」の文庫本があったので購入。掲載誌『芸能東西』は全部持っているのだが、まとめて読めると便利なので。
 家庭の事情で幼くして芸者の置屋などで働くことになった綾さんは、やがてキャバレーで働きだすと、持ち前の負けん気やプロ根性からお客様に尽くしナンバーワンとなるが、閉店やら男女問題のゴタゴタが転機となりトルコで働くことになり、ここでも努力を惜しまずナンバーワンとなる。
 小沢昭一は、多くのトルコ嬢の中からこの綾さんを接客のプロ中のプロとして選び、生い立ちから水商売に入る経緯、接客の極意を聞きだす。
 これは、赤線廃止後間もなく風俗業界に飛び込み、その第一線で活躍してきた現役トルコ嬢の貴重な証言であると同時に、インタビュアー小沢昭一の問わず語りに話を運ぶ妙が見事な対話集でいて心地よい。
 「うん、うん」と頷いたり「へーえ」「ほほう」と感心したり笑ったり、「なぁるほど」「怖いよねえ」「…可哀そうにね…」など綾さんの気持ちにそって相槌を打ち、ところどこで質問をさらりと繰り出す…。接客のプロ綾さんと、芸能のプロ小沢昭一だから成り立つ話芸というか。文字だとただの「うん」だが、綾さんの気持ちに応えてひとつひとつ違っているだろう小沢昭一の姿が目に浮かぶようで、そのインタビュー術にひきこまれてしまう。

●04.10.10  口琴演奏家アーロンさん来店の予定
 タコシェでお取り扱いしている口琴の大部分はハンガリーの口琴作家・ゾルタン・シラギさんによるものなのだが、そのご子息で口琴演奏家のアーロンさんが演奏とワークショップのために来日するにあたり、日本口琴協会のご協力を得て滞在中の空き時間にタコシェにもいらしてくださることになりました。11月6日の夕方4時から6時くらいまで。ゾルタンさんの口琴を実演しつつ、口琴に関する様々な質問にも答えていただけます。口琴が欲しいのだけど、どれがいいのか、音色がそれぞれどう違うのか…など、聴き比べてみたい方、この機会にぜひぜひいらしてくださいませ。ふだんお取り扱いのないイレギュラーな口琴もお持ちいただく予定です!

●04.10.09  台風
 10年に一度の大規模な台風が東京に接近ということで、天気予報では外出をひかえるようにとまで言ってるせいか、客足も遠のくばかり…。幼い頃、台風が近づくと父親が雨の中、どぶ板をひっぱがして雨戸が吹っ飛ばされないように打ち付けたりして、ただならぬ臨戦状態に興奮したものですが、そんな経験からか今でも台風が近づくとわくわくします! 丸山健二の小説じゃないけど、台風の目を追いかけてゆきたい気分です。といっても、台風と積雪の日は本当にお客様が来なくなってしまうのでさびしい限り…。そんな中でも来てくださるお客様は本当にありがたい。お客様が少なくても、たまたまその時に来てくださる方もいらっしゃるかもしれないので急に店を閉めるわけにはいきません。ネットで台風情報をチェックして、電車が止まる前に店員の中沢を帰宅させ、完全に電車がとまっては自分も帰れなくなるので台風の様子を逐一気にして仕事を続ける…。で、調べていると台風22号はアジア名マーゴンといって、誕生日時や消滅予想日時なども出ているので、生き物みたいで親しみを感じてしまいました。暴れん坊なのに儚い命のマーゴンちゃん。もしこの日に捨て犬や捨て猫を拾ったらマーゴンという名前にしたことでしょう。ところで、早めにと思って夕方に中沢を帰宅させたのですが、後からそのときが台風のピーク時だったことがわかりました…。ほぼ定時に私が店を出たときは雨はもう一滴も降っていませんでした。10年に一度の覚悟をしていたのに。

●04.10.04  VIVA 日野日出志先生!
 ホラー漫画の巨匠日野日出志先生の映画の鑑賞券やフィギュア、Tシャツなどがタコシェに入ってきました。いっときのホラーブームの中では、発表する媒体や読者に合わせて、日野先生の作品も少女ホラーが中心でしたが、日野先生の本領は青年誌に発表した作品の大人をも恐怖につき落とす救いのなさと生理的な恐怖を喚起するあの画風にあるような気がします。(さらに一枚絵のイラストの怖さと裏腹の色彩の美しさといったら…)猟奇や事件でいっぱいのご時世だからこそ、先生の中で練り上げられた現実を凌駕する極彩色の純粋な恐怖に浸りたいのです。ついでに太田螢一さんや安達かおる監督も参加したギニーピックも再評価されてよいと思うのです。今こそ日野日出志先生を読みたい、読もう! THE VERY BEST OF日野先生の本が編まれることを夢見ています!(というか、頭の中ではインデックスを勝手に編集中)

●04.10.03  夢みる頃をすぎても…
 お店ははじめて10年以上。私もその分年をとったわけですが、心はまだまだ乙女のつもりなの! 酸いも甘いもかみわけた経験豊富なマダムじゃなくて、流れのままに生きてきました〜っていう(見ようによっちゃやばい)年をくったロリータ、さらにいえば、おやじがかったロリータなの。以前、水森亜土さんにお目にかかったとき、たとえ絵が売れようが売れまいが、お月様やお星様は自分を見ていてくれるから絵を描く…みたいなことを話してくれて、私もお月様やお星様の何億光年とかいうスケールに比べてただでさえもみみっちい人生をチメチメ生きちゃダメよね!と空を仰いで暮らしたいと思いました。
 私の知人の中で、群れたりつるむことをよしとせず凛と星を仰いでいる人といえば嶽本野ばらちゃんが思いあたり、そんな野ばらちゃんをふと思い出す心持ちの今日この頃でしたが、メールなど出さず、野ばらちゃんの本を手にとり、どこかで同じ星を同じ時に眺めている人がいるかもしれないというロマンを抱くように、潔いロリータスピリット溢れる作品と言葉を通して野ばらちゃんとの交流を深める読書の秋。

●04.10.02  私の仕事場
 ちくま文庫の女流エッセイのアンソロジー「for ladies by ladies」にも収録されている、いわさきちひろの『私の仕事場』を、文庫本『ちひろのことば』 の中で改めて読む。画材と印刷物の山積物をおしのけてようやく40センチ四方を確保してかろうじて仕事をする、とか、税務署からの手紙や督促状を仕事にかまけて放置している、などなど、あのかわいい絵を描く人も私と同じように整頓が苦手みたい…(税理士さんがいてくれるのでなんとか間に合わせて納税などはしているのだけど)と安心する一方で、ちらかすだけちらかしておいて絵を描くわけでない自分を反省する。

●04.10.01  青山を歩く
 休日のお昼下がり、代官山とか青山を歩くのは、なんとなく気持ちいいものだ、と思いながら、もたもたしていたため青山に着いたのは夕方。秋風がうすら寒い…。期間限定ショップcolette meets comme des garconsを覗く。遊び心あふれる、やわらかな素材の服やバッグ…、ゆるんだ体型や姿勢ではただのだらしない人になってしまう、モデルじゃないと着こなせない、使いこなせないような品々。見るだけ見て帰る…。
 少し前、レイモン・ペティボンのドローイングを使った布のバッグを持っているお客さんがみえて、それがとてもステキであったので(その人のコーディネイトもよかったのだが)、「そのバッグはどこのですか?」と訊きたかったのだけど、仕事でないことを話すのはちょっとはずかしいし、セクハラに思われたらいけないので、大西に訊いてもらってcomme des garconsだとわかり、私も持ってしまおうかしら〜と思いつつ、私が持ったら乞食袋になってしまうのではという心配がぬぐえない。ファッションの道は険しい。


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