2003. May      トップへ

  by Ayumi NAKAYAMA



●03.05.30 おんなのからだは…
 数日前、出先で用事を済ませた私は、ふと、知り合いがそのあたりに住んでいることを思い出した。お礼をしたいこともあって、ちょうど手帖に名刺を入れっぱなしにしていたので、急ではあるが電話を掛けてみた。
「もしもし〜元気?」「ああ、元気。こないだは行けなくてごめんなさーい!」「いいのよ、あのね、私、今、近所にいるの!」
「…え、そういうことなの…」
このとき、電話の向こうの声は一転して、暗く落ち込んだ。30才を過ぎた男がいったいどうしたらこんなにも落ち込んだ声を出せるのか、というくらいに落ち込んだ。
 そして、ハッと気づいた。もしや、私はストーカーとか変態に間違われているのではなかろうか、と。確かに、私だって、知り合いのオヤジが「いま、近所にいるんだよ。(ほら、カーテンをあけてごらん)」といきなり電話をかけてきたら、「え!」かもしれない。いつの間にか、私は変態オヤジになっていた。この年にもなると「近くにいるんです」と言ったところで、「どうしたの…?」とか「どこにいるの?」などとは言ってもらえず「え…!」の一言なのだな。自分をほぼオヤジだと自覚しなくてはいけないと認識させられた出来事であった。
 最近出た寺山修司の文に宇野亜喜良さんが絵をつけた「踊りたいけど踊れない」(アートン)という本の中には「女のからだは お城です/なかに一人の少女がかくれている」というすてきな言葉があります。しかし私はこの一節を思い出しながら、私の中には一人の少女ではなく、一人の変態オヤジが隠れていたのだと思いました。からだもお城じゃないかもしれませんが、心にオヤジを飼いながら、この先もずっとやってゆくつもりです。

●03.05.28 ふたつのTOM
 私も大好きな吉祥寺のTOM'S BOXが少し店舗を拡張することになり、六月のあたまにお休みして改装などするらしい。お店が広くなって、品物が見やすくなったり、いろいろなものが展示されるのは嬉しいが、今までの小さな空間も好きなので、改装前の姿を記念撮影しておこうと勝手に思い、片づけがはじまる前に入り込み、店員の笹倉さんにも入ってもらって撮影! 小さなトムズボックスありがとう〜お疲れさま。広くなったお店も楽しみです。
 笹倉さんと、ギャラリーTOMのお話もした。ギャラリーTOMは松濤にあるギャラリー。私は、以前、村山知義(MAVOのメンバーの一人で、その後舞台芸術で活躍)について、お話を伺うために、ご子息でいてギャラリーTOM(知義の愛称)を作られた村山亜土さんをここに訪ねたことがあった。亜土さんのお子さんが視覚障害者でいらしたことから、ギャラリーを触って鑑賞する美術館として、彫刻をたくさん置いていたけど、視覚障害の方が作った作品もたくさんあって、彼らの作った人物というのは口の部分が大きく動きをよく捉えたりしていて、私が気づかずにいた音の世界を形にしているようですごく興味深かった。
 少し前に、その亜土さんも亡くなり、追悼の展示が最近行われていたが、ギャラリーは様々な方向や可能性を探るべく、いろいろな試みをしているらしい。6月からは長倉洋海さんの写真展を行うそうで、床から壁から写真だらけにするとか。チェコの作家さんを呼んで作品を紹介したりとか、ギャラリーTOMいろいろな動きがあるようでまた行ってみたくなった。

●03.05.25 メルシィ
 最鋭輝さんをお招きしての、タコシェ初のインストアライブ。最鋭輝さんは色恋の哀切を切々とシャンソン風に歌い上げるミュージシャンでいて、持ち前のサービス精神と礼儀正しさから、化粧とドレスアップ(ビジュアル系のようでいてそれとは違う)、小粋なトークを忘れない好青年。最近では、そのトークと気配りから司会業の依頼も増え、独自の弾き語り?のジャンルを開拓中という。職業・最鋭輝とでもいったその路線を極めてほしいし、今後も応援したい!

●03.05.22 犬の散歩
 辛酸先生のイベント(6/13 アップリンクファクトリー)に使用する映像撮影に同行。といっても、私は出演もしなければ、撮影スタッフでもない。待機中の出演犬と一緒にいただけ。犬連れだと、いろいろな方に「かわいいですね」などと声をかけられる。ナンパやスカウトなどされたことがないので、とても新鮮な気分を味わうことができた…。

●03.05.21 蒸発旅日記
 つげ義春「蒸発旅日記」を映画化(6月からユーロスペースで公開の予定)した山田勇男監督にこの作品に関してお話を伺った。居酒屋で「よく考たら、これって勝手に女のところに押しかけて、結婚をほのめかして、関係を持ったら、逃げ去った、ひどい男の話じゃないですか」と、つげワールドや映画の叙情などおかましないの質問をする私に、山田監督は誠実に「うーむ」と唸るような考えを話してくださった。詳しくは次号のアックスにまとまる予定。

●03.05.17 宇野亜喜良さんサイン会
 宇野さんのサイン会。今回はインターネットでも予約を受け付けたので、お客様のご連絡先を伺っていたり、事前に時間などの問い合わせをいただき、遠方からわざわざいらっしゃるのだなぁ、とか、忙しいのに時間を都合して間に合うように考えてくださっているのだなぁ、などとお客様のことがちょっとわかって、有り難かったです。お客様がみな、それぞれの想いを運んできてくださっているのだなぁと。ご来場ありがとうございました。

●03.05.13 ブックカバー
 西岡兄妹の展示にあわせて、オリジナルの文庫本用のブックカバーを作ろうとしている。西岡さんに「本」に関するかわいいイラストを描いてもらって、pou-cou-penというブランドを作って、女性用の洋服やバッグなどを発表しているしまもり千広さんに設計や制作をお願いしてすすめている。
 いろいろなブックカバーを見て研究しながら、実用的でいて、センスもよい品を開発中。いまのところ、けっこういい線いってると思うのだけど、限られた日数で仕上げなくてはならないので、ドキドキです。

●03.05.12 ギャラリー
 昨日は疲れはててしまったが、途中立ち寄ったギャラリーで偶然にもよい展示をいくつか見ることができたのは、望外の喜びであった。
 OPA!で行われていた松本典子さんの写真展は、恐山で偶然みたカゲロウの羽化を撮ったもの。恐山といえば寺山ワールドを思い出してしまうが、硫黄で黄色く染まった砂も美しく、そこが恐山であるとは気づかない生命の劇がとらえられていた。松本さんは、戦時中に毒ガスを製造していた瀬戸内海の島にも撮影に行き、そこで繁殖しているウサギたちの写真もファイルにおさめて展示していたが、決して奇抜じゃないのに、名所や廃墟などかつて○○だったところを全く別の視点から切り取っているところがとても新鮮だった。
 それからロケットで行われていた高橋啓祐の映像と佐藤暢隆の写真展。ふたりともダンスカンパニー・ニブロールの公演のために作った映像や写真を展示していた。ニブロールの舞台で、ダンサーの動きとコラボレートした映像の動きもよかったけど、人の動きと切り離して映像単体で見てもなお楽しい。一日の生活をテーマに、多面体がいくつも現れては、それぞれの面にいろいろな暮らしの映像が映し出され、さらにその多面体内部も誰かの個室のようになっている。その幾何学的な模様と日常生活の組み合わさって、シンプルなフォルムや単純な動きと、日常というごちゃごちゃとが同時に成立している不思議。ずっとずっと見ていたかった。

●03.05.11 チラシ撒き
 昼までに仕事を片づけてチラシ撒きをするつもりが、少し時間が長引いて、3時くらいからチラシ撒き。今回、新しい試みとしてギャラリーを回ってみよう!と思いたち、青山界隈を回ってみたが、チラシなどの置き場自体を持ってなかったり、断られたりで、思い袋を背負って回ったけど、あまり効果はなく疲れた。東京は広い。方針転換することにした。
 その帰り、重い鞄をさげて自転車に乗ろうとしたらパンクしていた…。

●03.05.10 辛酸先生来店
 辛酸なめ子さん来店イベント。最近、ますます忙しい辛酸先生…。小動物のような静かな雰囲気でいながら、精力的にいろいろなところにでかけて独自の取材を展開しています…。
 この日もお客様にサインを入れたり、写真を一緒にとったりした後、取材(自主取材)へと旅だってゆかれました。先生の取材力はすごい。
当日の様子はまたアップします。

●03.05.04 冷めてもおいしい珈琲
 チラシ撒きの最中、高円寺のカフェジャンゴにも立ち寄り、少しチラシを預かってもらう。ここは珈琲豆屋さん。いろいろな喫茶店に豆を卸したりもしているのだけど、店自体は昨今のカフェブームに便乗する気配もなく、どちらかというと無愛想で、通りかかった人の多くはもしかして、豆問屋で小売りはどうなのかなと思ってしまうのではないかというくらい質実剛健である。(本当は100gからその場で注文をきいて、挽いたり詰めたりしてくれます)
 主は頑固おやじというわけではないのだが、豆は雨の日に配達するとおいしいものを届けられないからといって、配達日は天気次第。ひとり店番をおやすみして、昔からのお得意には遠くまで届けにゆくから、さんざん雨が降った後のお天気の日には留守なんてこもある。
 そんな主・吉田さんの言い分はこうだった。
「俺はうちの珈琲が世界一うまいと思ってはいるけど、どううまいかというと冷めても味がかわらないってこと。たいていの珈琲は冷めるとおいしくなくなる。なぜ冷めるとまずくなるかと言うとそれは雑味っていうの? それが多いんだと思う。料理でもそうじゃない。灰汁とかが入っているとまずくなるでしょ」
吉田さんの蘊蓄に私はただ感心した。そして「で、企業秘密かもしれませんが、その雑味を取り除くには、どうしたらいいんですか…?」と質問すると---
「心がきれいであること」という驚きの答えがかえってきた。
もちろん、私は「なんだよ、そんなことかよ。もっと理屈で説明できないの」と食い下がった。しかし吉田さんは「最終的には心ですよ、気が入ってるんです」なぞと言う。
 ちっとも説得力ない話をしながら、吉田さんは、質の悪い生豆を取り除いたり、焙煎後もムラのある豆やよくない豆をひとつぶひとつぶより分けていた。よりわけた豆だけでも何杯珈琲が飲めるのかしら…なんて私はもったいなく思ったけど、これらは決して商品にはならない。
「ひとつぶひとつぶ、ずいぶんたいへんね」と言うと、吉田さんは「別にこんなのたいしたことないです」と言う。
 なんとなくすこしわかったような気もする。
川崎ゆきおさんの「珈琲とは黒く苦い水」程度に、珈琲の味がわからない私だが、ときどきジャンゴの豆を買う。
(ちなみに、SAPANAや高円寺の円盤でジャンゴの珈琲をいただけます。夏にはアイスコーヒーもボトルで売ってるので便利です)

●03.05.03 チラシまき
 5月にはいろいろなイベントがあり〜辛酸なめ子さん、宇野亜喜良さん、最鋭輝さん〜、特に宇野亜喜良さんのサイン会の日程が急に決まったので、いろいろな媒体に情報掲載をお願いするにも時間がなく、チラシを作って、GWに撒こうと、私は、「MONO AQUIRAX」を手がけたデザイナーには「パクっておきますので!」と強引に断り、彼がデザインした本のチラシの余白にサイン会情報をはめ込みすばやく版下を完成させた。そして、中央線沿線にチラシ配布に出かけたのであった。
 タコシェのチラシ撒きは殆ど私がやっている。みんなでやればいいのだけど、なにかのついでや仕事の行き帰りにちょっと撒くという作業ゆえ、なんとなく私がやることが多くなってしまうのだ。
 でも、いろいろなお店に出入りできて、行くさきざきで刺激を受けるし(殆どの店で買い物をしてしまう)、第一、チラシが減ってゆくこと=仕事が進んでいる、というように目に見えて仕事量がわかる単純作業なので、達成感もあって好きである。
 でもって、嬉しいのは、「辛酸さんのサイン会があるんです」とか「宇野さんのサイン会を行うことになりました」なんて言うと、お店の方が「好きな知り合いがいるんで教えてあげなくちゃ」なんて言ってくれること。そうやって、本当に好きな人に伝えていただいて来てもらえたら嬉しいし、余分があったら自分の店のDMを撒くついでに一緒に撒きましょうか?なんて言ってくれる方までいて感謝感謝。人とチラシがこうしてつながってゆくのですね。

●03.05.02 宇野亜喜良さんサイン会
 急な展開で、宇野亜喜良さんのサイン会をタコシェで行う運びとなった。「MONO AQUIRAX」という宇野さんのごく初期から最近までの、新聞・雑誌に掲載されたモノクロイラストを約2500カットも集めた600ページの画集発売を記念してのサイン会である。
 この本は、いち宇野ファンが、掲載紙をそのつど買っては切り抜いて長い時間をかけて収集した膨大なスクラップが基になっている。想いが通じて?画集を編むことになり、スクラップを資料に、原画にあたったり、宇野さんが本にあわせて大胆に絵をトリミングしたりしてまとまったものだそう。長い年月の間に作家が作ったものが、ファンのもとで蓄積され、それがまた作家を刺激して…って、なんかいい話ですね。
 縁あって、そんな本の誕生を記念するイベントをタコシェで行えることを嬉しく思うし、ぜひぜひたくさんのお客様においでいただきたいと思います。宇野さんやたくさんの皆さんをお招きするには小さな店ですが、当日まで準備をしたいと思います。

●03.05.01 Have a nice day!
 フランスからお客様がみえた。映像や画集についていくつか質問を受け、品物をお出しした。お買いあげいただいた後で、お客様は日本語で「アリガトウ」と言ってくださり、続いて「Have a nice day!」と挨拶をされた。しかし、それを聴いたイトーは、いきなり笑い出したのである。(な、なにごと?)
 フランス語ではHの文字は発音しないので、多くのフランス人はハ行の音に弱い。そこでお客様も「Have」を「アヴ」と発音し、フレンチアクセントで話した。その結果、イトーの耳には「Have a nice day!」が「アブナイゼー!」と聞こえたらしい。陽気に「アブナイゼー!」と手を振り去ってゆく異国からの客人。確かにそれはおかしいかもしれない…。




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