Diary 2002.08  トップへ

by Ayumi NAKAYAMA


●02.08.30 大家と店子といったら
 月末。来月分の店の家賃とともに更新料金を振り込み、その帰りに、水ようかんを持って大家さんのところに行き、その旨を報告して「今後ともよろしくお願いします」と挨拶。大人っぽいことをしてしまった。
 しかし、こうやって考えると、ふつうはお金を払う方がお客様でいて、お金をいただく方が日頃のご愛顧にこたえて何かサービスする、という商売が多いのに、大家と店子というのは、落語で「大家と店子といったら親子も同然」などというように、子が親を敬ったり感謝すべきなのと同様、店子の方が大家に「貸していただいてる」というスタンスで接することが多いように思う。不思議な商売である。

●02.08.28 オリジナル袋
 ちょっと前、店のオリジナルの袋を作りたいのだが…、と書いたが業者に見積もりをとってももらったところ、これまでの何倍もの値段になることがわかり頓挫、ということを書いた。しかし、その後、インクが好きな色に指定できない、袋の選択肢も少ないなど制約はありながらも、予算面でクリアできるところをみつけ、袋計画が前進。
 タコシェの看板も描いていただいた、現在パリ在住の友沢ミミヨ画伯にパリの本屋さんや雑貨屋さんのような?おっしゃれ〜な図案をお願いし、じっくり取り組んでいただいてます。私も図案があがるのが楽しみ。早ければ秋の終わりに袋はできあがるでしょう。

●02.08.27 オフ会を行います
 私は版元ドットコムという版元さんたちが集まって運営しているサイトの中の本屋街にワンコーナーをいただき本の紹介をしているのだが、そのコーナーのオフ会というのを行う話が進行中である。
 私はオフ会というものをよく知らないのだが、通常、そのサイトの愛好者たちがこれを企画し、サイトの運営者を囲んで交流を深めるものと聞く。しかし、私のコーナーにはそのような愛読者はなく、他の執筆者やサイトの管理者とともに、自ら企画し集まってもらおうというものである。
 もしかして誰も来ずに自分たちだけだったりして…という不安をおいやりながら、皆様に参加していただける企画を練っている。今のところ、持ってこれれば入門書というテーマでお気に入りの一冊を持って来ていただいて、オフ会のあとでそれぞれのおすすめをサイトにアップする、という面白いアイデアが出たりしています。(本を持たずに飲み食いと交流だけの方も大歓迎)
 詳しいことが決まったら、ここでも報告しますので、よかったらいらしてください。9月の下旬に予定しております。

●02.08.26 はかりしれない他人の情熱
 日曜日、製本のワークショップに出席後、千駄木あたりをうろついていたら、イラストレーターの吉田稔美さんに出くわした。弥生美術館に内藤ルネ展を見た帰りとかで、少しお茶をすることに。
 吉田さんは千駄木に知人の雑貨屋さんがあることや、そこで扱う品物について語るうちに、ボタンに話が及んだ。
 わざわざ、フランスで買いつけ仕入れられるボタンのこと、様々な材質がありそれぞれに鑑賞ポイントがあること(たとえば、貝細工のボタンはふたつと同じ模様がないことなど)、数少ないボタンコレクター談義。洋服の付属物に思われ、なかなかこれだけを切り離して愛でる機会が少ないボタンに注ぐ、彼女やボタン仲間の情熱。
 ボタンを見直しつつも、愛好家の情熱にはかりしれない世界の広がりを感じたひとときであった…。
 9月には知り合いのボタンアーティストさんがNHK教育テレビのおしゃれ工房に出演するという。NHK進出を喜び合う彼ら。樹脂や木材を使ってのオリジナルボタンの作り方をレクチャーするのだそう。私も番組を見て少しボタンに近づいてみたい。

●02.08.25 骨盤底筋体操
 処方箋を調剤してもらっている薬局には、健康をテーマにしたフリーペーパーがいくつか置かれており、待ち時間に読んでいる。その中に、「さあ! 始めてみましょう 今日からできる骨盤底筋体操」というのがあり、貰って帰ってきたのを家で読んでみた。
 年をとるとクシャミをしたときに漏らしてしまうなど、尿失禁に悩む女性は多いそうで、私もいつ漏れがやってきやしないかと心配なのだが、これは、その予防や軽減につながる体操である。
 理屈は、膀胱や腸の周囲の筋肉がゆるむと膀胱が沈み尿道に圧をかけにくくなるために尿漏れをおこすので、この筋肉を鍛えろ、というものである。
 説明を読むと、「仰向けに寝て足を肩幅に開き、ひざを立てて、肛門と膣を締めて5つ数える」「床にひざをつき、ひじも床に立てて手にあごを乗せ、肛門と膣をしめて5つ数える。たとえば新聞などを読みながらしめたりゆるめたりをくりかえすとよい」とある。ほかにもバスや電車の椅子に座りながら、あるいは机や台所の流しにもたれながら、肛門と膣をしめたりゆるめるとよいそうだ。
 尿道でなく、肛門、さらに膣を動員しなくてはならないとは…。何か違うところを鍛えているような気がしないでもない。ともかく呼吸をするように、常に肛門と膣をしめたりゆるめたりすればよいのだろう。しかし、肛門をしめると尻も同時に動き、尻呼吸をしているようだし、激しい欲求をアピールしているようでもあり、電車の中でつり革につかまりながらはしない方が無難だろう。それにしても、健康や医療の下にこういうことを堂々と書ける「ヘルシー系」は曲者である。

●02.08.24 麻布十番祭り
 御世話になっている税理士さんは麻布十番に住んでらして、毎年夏に行われる麻布十番祭りはたいそう賑わうので、見物に来たら案内しましょう、と声を掛けてくれたので、お言葉に甘えて、仕事が終わってから会場へ。祭りは9時半までなので、到着した9時頃には、すでに店じまいモード。それでも、外国人居住者が多い土地柄とあって、国際市場という催し物エリアでは、各国の屋台が出て、自慢料理を販売していた。人気料理は完売してたり、長蛇の列ができていたので、ただながして見るだけ。大使館まわりの方々の本場の味もあれば、近所のエスニック料理有名店も出店していて、屋台価格で食べることができる、お得なかんじである。麻布十番商店街の屋台も見たあと、飲み屋で一杯。税理士さんはなじみの飲み屋のママさんや店員さんと言葉を交わし、歩いている途中でも店のおばちゃんに声を掛けられ、とても地元なかんじ。「どうですか。地下鉄が通って便もよくなったし、けっこういいでしょう」と麻布十番をアピールし、地元のお店が出していた屋台のお総菜各種をおみやげに持たせてくれた。そんなもてなしで、私にとって麻布十番の好感度はいきなりアップ。
 ところで、税理士さんは、ずっとお母様の介護をしてらしたので「今日は、いいんですか?」と尋ねたら、笑いながら「いやぁ、実は6月に突然、亡くなって、四十九日をすませたところなんですよ〜」と。その口調には少しもしめった感じはなかったが、肉親と別れて7年ぶりに戻ってきた、自分の時間を祭見物や夜の居酒屋ですごす、そんな、ちょっぴりほろにがい大人の自由の味を知った祭りの夜であった。 

●02.08.23 夏休みの終わりの気分
 製本のワークショップに行っているものの、作業は難航し、予定通りにすすまない。製本というより、編集作業のドツボにはまってしまったのである。必要な註釈を作ったり、図版を手直ししたりと。一度はまったらはいがれないアリ地獄のようである。さらに、今は月末であり、8月はタコシェの年度末であり、レズビアン&ゲイブックフェアも来週にせまり、倉庫の修理もあるし、書かねばならない原稿もあり…もう夏休み終わりの小学生気分である。去年にこりて年度末の申告に関してはだいぶすすんでいるが、ほかがそれをうわまわって、ただただあせる。あせっても、食事はしっかり作って食べ、眠くなれば自然と寝ている…。なので、よけいに時間が足りなくなる。

●02.08.22 鳩の相談
 鳩のせいでやぶれた倉庫のシートをはりかえるために、工務店の方がやってきて、今度はシートを分厚くするので、好きな色を選んでほしいと言う。工務店の人は白をすすめてくれたが、本を置いておくのに、あまり内部が明るいと背や表紙がやけやしないか心配なので、真っ暗は嫌だが、ほどほどの明るさにした方がいいようにも思い、悩む。
 新しいシートに鳩がよりつかければよいのだが。いい策はなく、ただ悩むばかり。イトーなど考えこんだあげくに「ゴキブリやアリやナメクジ駆除みたいに、毒餌を置いたらどうなるんですかねぇ」などと言うので「ワイドショーにでられるよ」と答えておいた。ときどき、ワイドショーで鳩の足を切るなどの虐待が話題になるが、きっと似たような状況〜毎日、必ず洗濯物にフンつけられるなど〜でキレた人がやってしまうのであろう、と何か犯人像にわれわれがだぶり、怖くなる。
 気をとりなおし「いいから、私がちゃんと専門知識を仕入れて解決するわ。本や人間の都合ばかりでシートを選ぶんじゃなくて、鳩の気持ちになって選ぶのよ。鳩の嫌う色のシートにするわ。今から野鳥の会に聞くから」と、いきなり野鳥の会に電話。
私「…というわけで、鳩には本当に困っていますが、手荒なことはしたくありませんので、鳩の嫌う色を教えてほしいんです」
野鳥の会「はい…鳩には好きな色も嫌いない色もないんです」
(子供電話相談室レベルの質問、そしてやさしい口調と当たり前の答え)
私「ひょっとして、鳩は色盲ですか」
野鳥の会「いいえ、ちゃんと色はわかっていますよ」
私「…。じゃあ、鳩を防ぐ方法はなにかありますか」
野鳥の会「CDなど光るものを吊すというのも方法ですね。しかし、危険じゃないとわかればすぐに効かなくなりますので、目玉の風船に変えるとか、頻繁に交換する必要があります。しかし、鳩もどんどん学習して、やがて全然効かなくなります」
私「利口なんですね」
野鳥の会「着地する部分の数センチ上にてぐすをはるのは効果的ですが、そちらは屋根で、てぐすをはれないんですね」
私「ええ。それにしても、近くに鳩の繁殖地とか飼育場でもあるのでしょうか」
野鳥「そちらの鳩は灰色の鳩ですか」
私「はい、ドバトです」
野鳥「でしょう。ドバトはもともと崖状のところに、たくさんの家族でくらすんですよ。ですからマンションですとかビルにたくさん集まるんですね」
私「なるほど、よくわかりました。どうもありがとうございました」
鳩の視覚や暮らしぶりはわかったが、鳩撃退の決め手はわからぬままである。平和のシンボル鳩との攻防は続くのであった。

●02.08.21 けんもほろろの…
 店の仕事では、納品のうけつけだけではなく、返品も行わなくてはならない。これまでデータに登録してきた納品者さんの数は2000近く。現在はお取引を終了したところもあるので、通常、やりとりをしている方々はこれよりだいぶ少ない。しかし、個々に直販をお願いしているのだから、納品や支払いの手間はかかる。開店直後からからずっとおつきあいの続いている方もいれば、そうじゃない方もいらして、ご無沙汰してしまう方もいる。
 というわけで、新しい商品を入れるためにも長らくおあずりしていたものをお返しなくてはならなのだが、ときどき返品のためにご連絡をとろうしても消息がつかめないことがある。今日はイトーが返品の連絡をしたところ、男性が電話に出て、呼び出してもらおうとするなり、何も言わずに電話を切られたという。私は「女性あてに男から電話が入って、何か変な関係と誤解されたとか。それとも、セールスと間違われたのかしら。私がかけ直してみるわ」と再度チャレンジ。今度は、無言で切られることはなかったが「○○さんは、今日、戻られますか」「さあ、帰ってきません」「お預かりしているものをお返ししたいのでご連絡をとりたいのですが…。ご伝言願えませんでしょうか。あるいはご連絡先をお教えいただけますか」「さあ、わかりません! ○○のことは知りません!」けんもほろろである。お伺いした電話にご家族はいるが、とりついでいただけない。これまでにも数回こういうことはあった。悪質なセールスや妙なとりたてと誤解されているのであろうか、それともご本人とご家族の間に何かあったのか…。困ってしまうパターンである。

●02.08.20 バッタリの連続
 ドンキホーテに倉庫に入れる本棚を探しにゆくも、そういう大きな家具は売ってなかった。ドンキホーテをよく理解していなかったのかもしれない。店内を歩いていたら市場大介氏にバッタリ。お互い、安売り店で出会ってちょっと恥ずかしいような…。挨拶して少し話をして別れ、別のフロアに出るとまた市場さんとバッタリ。混んでるドンキホーテが嫌になりいつも行くスーパーしのとめに行くと、案の定、負けずにセールをやっていたのでこっちで買い物をする。ブロードウェイに戻ると、ちょうど駅方面へ向かって建物を通り抜けようとしている川崎タカオさんに出会い、店に戻ると、新潟から上京してきた古泉智浩さんに会い、とバッタリがたくさん。本棚はなかったがこれがドンキホーテ効果?てなわけないか。
 ほかに効果といえば、コミケが終わり、このビッグイベントに合わせて作られたミニコミの納品があるのがこの時期の特徴。コミケ効果である。

●02.08.19 ドンキホーテ
 台風で再び倉庫に雨漏りが。工務店の見積もり書と雨漏りを見比べ、出費は痛いが直さないことには、品物が風雨にさらされて心配なので修理することに。そういえば、今日、中野に安売り店・ドンキホーテがオープンしたのであった。家に帰り、ホームページを更新しながら、初日にドンキホーテを見逃してしまったことに気づきガックリ感を覚えた。倉庫を修理する際に中のものを一度出さないといけないので、こわれかけた本棚も新しくしたい。いい棚がドンキホーテにあるといいなぁ。そういうものも売っているのかしら。(今まであまりドンキホーテに行ってないのでよくわからない)明日、ドンキホーテで棚を見る。すごーく小さな明日の課題である…。

●02.08.16 ちんまん言葉の収集者
 松沢呉一はあいかわらず、全国各地のちんまん言葉の方言収集(全国各地のチンマン、ウンコ・シッコ、乳・尻などの方言を集めてデータ化している)に余念がないようで、久々に合ったので、その成果を聞くうち、私も忘れていた記憶が少しずつよみがえってきた。
 私は東京生まれの東京育ちのため、特別珍しい言葉を知っているわけでもないと思っていたし、松沢もそう思ったのであろう、あえて私には尋ねてこなかったのだが、父親の郷里が新潟内陸部の農村で、小学生時代には夏休みをそこで過ごしていたので、「なたきる」=「うんこする」(トイレにゆくときに“なたきってくるわ”などと言う)という懐かしい言葉を思い出した。農村はうんこまで力強い響きである。
 ちんまん言葉収集は、その地方特有の言葉を色々収集するだけでなく、全国の分布状況もできるだけ正確に把握しようとしているそうなので、オーソドックスな表現や広域に分布している言葉ですでに収集されているものでも出身地や使用地域を添えて追加登録してほしいのだそうです。インターネットでの登録も行っているので興味のある方やご理解のある方はご協力を。意外と東京周辺の県が少なかったり北陸・山陰が弱いそうですので、特にその辺りの方はよろしく。
 言葉の収集をしている、などと聞くと、「お、文化人流学や言語学みたいな。柳田や南方か? フィールドワークはたいへんね、協力できれば」と思うものの、ちんまん言葉がたくさん集まったからといって何がおこるかは、不明である。いまのところ、ちんまん言葉の登録は4000余件なので、本にまとめたりするには不完全だそうで、とりあえず集まらないと話にならないようです。データが集まってちんまんの言霊が動き出す日が来ますように。

●02.08.15 歴史の証人?
 申告のための準備や8月末からのレズビアン&ゲイブックフェアの仕入れなどで、机に向かってまじめに働く日々。と同時に、光や風に夏の終わりを感じはじめる今日このごろ。
 今日は終戦記念日なので、母親に終戦の日のことをきいてみることにした。「ねえ、終戦のときのこと覚えてる?」「あんまり。…外で遊んでいてうるさいって怒られた」「玉音放送のときね。それで、戦争が終わった、ってすぐにわかったの」「終わったことはわかった」「ホッとした?」「そりゃあ、ほっとしたんじゃないの。学校行けると思ったし」「戦争で学校に行けなかったの…?」「田舎に疎開してて東京モンっていじめられるから行かなかった。おばあちゃんに学校行きたくない、っていったら行かなくていいって言うし、ずっと遊んでた」「それで東京に帰って学校に行ったの?」「うん、でもずっと学校に行ってなかったから次の年も(小学)1年生だった」
 母が終戦をよく理解できないのもわかるような気がする。遊びすぎて小学校で落第しているくらいだから。聞くだけ無駄であった。

●02.08.14 中野の名所
 お盆は車も少なく、光化学スモッグもなさそうで、東京にいても気持ちいい。富士山が見えるくらいに東京の空気も澄んでいる。それならばと、今日、私が食事に出かけたのは、タコシェの近所、中野サンプラザの20階にあるレストランであった。
 以前、貸しスペースを探して中野の公共施設などをあたっているときに、サンプラザにも行ってみたのだが、そのときに上にレストランがあることがわかった。ロケーションからして新宿副都心を臨む景色がすばらしいだろうと察していたが、夜景ならともかく日中はどうかな?と思って利用したことがなかったのである。しかし、お盆で見晴らしがいいうえに、昼ならランチタイム料金でお得なはず、というわけで、思い立ってはじめて行ってみたのである。
 思った通りの絶景。新宿副都心のビル群が手にとるようにそこにあり、平らな東京の地形を覆う大小のビルが彼方までひしめいている。そしてその向こうには山のシルエット。ただ、横のテーブルのヤクザ風というか謎のブローカー風の男4人組も景色に劣らず気になった。

●02.08.13 単行本化
 連載がある程度続いて評判もそこそこあれば単行本にまとめ…とうのは当然の流れである。お気に入りの作品で殆ど連載中に目を通してしまっていた場合、雑誌を後々までとっておけないので、保管用に単行本として購入しとりあえず通して読んでみるのだが、たいていの場合、それは確認・補習作業に終わることが多い。あるいは別の単行本化のパターンとして雑誌では連載できない大きな流れの作品やきわどい内容のものを書き下ろして一挙に出版というケースもある。
 いましろたかしの「釣れんボーイ」は、成り立ちとしては雑誌連載をまとめたものではあるが、連載という細切れの形では、山も谷もない怠惰な日常の断片のように見える一作一作が、電話帳のような厚さの一冊にまとめられることによって、それこそダレた毎日のようにズルズルとのしかかり積み重なって、読み終えたときには一仕事に匹敵する疲れさえ感じるくらいずっしりとこたえている。
 まとめるということによって、ここまで作品が違ってみえたり力を蓄えることになるとは発見だった。何のために本にまとめるの、その答えのヒントがここにもある。

●02.08.12 隠れたベストセラー その2
 お盆は昼間いつもよりお客さんがみえるし、通勤や仕入れの電車や道がすいているので嬉しい。
 ところで、毎月、月のはじめに、タコシェで前月に売れたもののベスト3をまとめているが、これはいうなれば瞬間最大風速というか、短距離競走のようなものである。
 本も人間と同じで一冊一冊個性があって売れ方もそれぞれ違うのである。すごい勢いで売れて、あわててバーンと追加を頼んで届いた頃になってピタリと動きがとまってしまうものもあれば、入荷直後には目立って売れてないようでいて、いつまでもジワジワダラダラと売れて気づかぬうちにたくさん売っていたという本もある。書店としてはドカンと売れるのも嬉しいのだが、この牛のよだれのごとくネバ〜と切れずに動いて、コンスタントに補充しつつ気がつけば100冊みたいな売れ方は在庫過多になることもないのでありがたく、なんともいえない信頼感というか頼もしさをその本や作者に抱いてしまうのである。
 タコシェでこのタイプをあげるとすると東陽片岡先生とその著作がそれである。時代に流されずに、すえた畳の貧乏暮らしの人々を職人的緻密さで描く東陽先生。読者もまた時代の流れに関係なく、再び巡り合う日を心の底で信じ、時々、足を運ぶ書店で、東陽本を目にしたときに、無言の再会を祝し、静かに本をレジへと差し出す…、そんな渋い約束がいつしか成り立っているかのようである。恐るべし、貧乏×中年×技の世界。

●02.08.09 お一人様
 午前中に用事をすませて店に出るときなどは、途中、外で食事をとることになる。また、店は少人数がシフトを組んでやりくりしているので、食事も各自時間をずらして一人ずつとる。そんなこともあって一人で外食することが多い。
 出先でふらりと入る定食屋や大衆食堂。店員は威勢よく私を出迎える。「いらっしゃいませー」。そして次に言う言葉は決まって「おひとりさまですか?」。軽くうなずいて「はい」と答えると「こちらへどうぞ」とか「そちらのお席にどうぞ」などと言って案内するやいなや「はい、3番テーブル、一名様」と大声で奥に向かって叫ぶ。すると奥からまた「はい、3番テーブル一名様」と大声がかえってくる。ときには、このこだまが2度、3度と響くこともある。これが18人とかなら、店もそれなりの支度が必要だろうから、何度も復唱したり確認したり注意を促しあうのもわかるが、一人なのだからもっとこう軽く…、みたいな気持ちになる。
 さらに、店にほかの客がいなくても、「お一人様はカウンターでお願いします」と言われてはでばなをくじかれる。とまり木みたいなところでごはんを食べるのは落ち着かない。
 ひとりごはんは嫌いじゃないけれど、お一人様扱いは嫌だ。

●02.08.09 類書
 いましろたかしの「釣れんボーイ」は、下手の横好きで、仕事もそっちのけで釣りのことばかりを考え、しかし、実際に釣りに行けばちっとも釣れずにさらに悶々とする漫画家・ひましろの日常をだらだらと描いたもの。中央線に乗っていると市ヶ谷の釣り堀にはいつも昼間から釣り人がいて「昼間からけっこういるよな…」と思って眺めていたが、そうか、こういう人たちであったか、と納得する反面、やらなきゃいけない仕事を前にほかのことにうつつをぬかす様は、私も変わらないとひしひしと感じるところがある。これは分厚いので寝むりながら読む本。
 そして、本屋で目にすると買ってしまって、しばらく読んでから「これは前にも読んだなぁ」と毎度思う内田百間(門に月)を電車の中で読み、締め切りが延びて午寝を貪る様などにやはり自分が重なり身につまされるのであった。
 類は友を呼ぶというけれど、本までもが…。あるいは、こういう本が私を呼んでいるのか。

●02.08.07 畸人ジーメン
 ミニコミ「畸人研究」の最新号を頂戴した。しばらく前に私が目撃し、同人にお知らせした、ただならぬ家を取材した記事が掲載されているからという理由である。たいした協力もしていないのに、ご報告や献本をしていただいて嬉しかった。
 が、記事を読むと、そこにも律儀に「タコシェの中山さん」が情報提供と記されており、畸人ジーメンになったようで、汗顔のいたりであった。

●02.08.06 箸を使えるようになる
 ぎっちょである。ただ、箸と鉛筆とハサミは右手でなくてはならないと母親に厳しく直されたために、この3つは右手で持っている。
 以前、水森亜土さんにお目にかかったとき、両手で絵を描くパフォーマンスを得意とする亜土さんも、もともと左利きだったのを、やはりお母様のしつけで右利きに矯正され、両手で描けるようになったと話してくださった。しかし、左利きを右利きに矯正した後遺症なのか、どもりにもなってしまったとも。これは私にも少し思いあたるような。何か言葉が出づらく、咄嗟のときにどもりやすいのである。ぎっちょかどもりかとどちらかを選べといったらぎっちょの方がいいかもしれない。
 しかも、せっかく矯正しても、もともと右はかなり不器用らしく、箸も鉛筆も長い間正しい持ち方ができなかった。大学生になってからもしつけ箸というグリップつきの箸を使ったりして、なんとか箸を使えるようにしたいと思い続けてきたがかなわなかった。しかし最近、なんとか中指を使って箸の開閉がほぼ自由にできるようになってきた。日本人なのに一生、箸はまともに使えないと思っていただけに30年がかりの習得に自分でもびっくり。訓練し続けて30年以上たってできるなんてことがあったとは。しかも、ほかの人はなんなくやっている事で。ただ、さすがに箸が上手に使えるようになったからと言ってもこの年齢では誰もほめてはくれない。
 しかし、これで安堵しているわけにはいかない。次は鉛筆である。そしてその次はどもり。全部克服するには100年くらいかかるかもしれない。

●02.08.05 webから本
 製本のワークショップに参加しているが、そろそろ気合いを入れて作業をしないと受講期間内に作品が仕上がらないので、家ではweb上のコンテンツをレイアウトしてプリントするという作業を行っている。
 私の目論見では、本は作りたくても、これといって表現したいことやまとめたいことがあるわけでない(英会話を習ったからといってアメリカ人らに言いたいことがあるわけでないのと同じである)、本を作ることよりも本の造りに興味があるので、中身を考える手間を省くためにコンテンツはwebから流用して、という考えだったのである。
 しかし、これがかなりの見当違いだったのだ。平面上で展開される、文字とイラストや写真の集合体という意味では、本もwebも同じなのだが、webは平面的でいて、一見、本のような体裁のものでも、その内容や構造は本と違って非常に立体的である。
 例えば、サイドストーリー的なものは別ウィンドウを開いて見ることができるようになっていたり、固有名詞などのひとつひとつにもリンクがはってあって、クリックすれば注釈の変わりに当人のホームページにとぶようになっていたり…。入れ子の構造になっていて、それらをひらいて注釈にしたり、囲み記事にしてみたり、加工せざるをえないものがかなりあるのだ。
 webのコンテンツを本にしようとしたことで、両者のメディアとしての違いが見えてきたような気がする。

●02.08.02 自然の猛威
 すごい雨に今年もまた倉庫の雨漏りが。毎年修理しても、大雨・積雪の際には必ず水が浸みてくる。後で修理をするときのために雨漏りする場所にマジックで印をつけてみたところ10ヶ所以上。自然の猛威は中野の零細商店にも容赦なく襲いかかる…。
 農家が果物を守るように我々もまた本にビニールをかけて商品を守る。少し前には、シートを破って鳩が侵入してきたこともあり、イトーが鳩を捕まえて追い出し、穴をふさいだが、風雨だけでなく、鳥からも本を守らなければならないのである。
 みなさんが日頃、何気なく手にする本は、書店員によって雨や鳥の害から守られた知識の果実なのです。



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