Diary July.2002  トップへ

by Ayumi NAKAYAMA


●02.07.31 少女趣味?
 タコシェではオンラインのほかに、電話やFAXでも通販や取り置きを受け付けている。
 今日、電話で、入ったばかりのミニコミ「少女趣味」のご注文をお受けした。これは、明治〜昭和の少女文化の研究誌で、単に今に残る当時の資料やコレクションを紹介するのでなく、今はおばあさんとなった当時の少女たちからその時代の少女雑誌や玩具、生活を聞くフォークロア的側面も持つ面白い雑誌で、かなりの力作なのである。なので、さっそくご注文を受けて嬉しかったのだが、郵便振替の手続きを説明している最中に、「念のため通信欄に「少女趣味」と書いてください」と言ってから(待てよ)と思ったのであった。
 というのは、電話の声の主は男性らしい。そこで私は、もしかして、お客様が郵便局で「少女趣味」と書いた用紙を提出して、局員に「少女趣味? もしかして少女趣味というタイトルのロリータビデオでもお求めなのでは?」などと思われてふと顔をのぞかれ、気まずい思いをされることになりはしまいか?と危惧したのであった。そこで急いで「あ、ミニコミだけでいいです」と言い直した。
 言い直したことで、私は何か危機を回避してひとつの事を為し遂げたような気持ちになった。そうして成し遂げた気分で、「よろしいですか? ご不明な点はありませんか? それでは、どうもありがとうございました」とお客様のお名前も聞かずにすっきりと電話を切ったのであった。
 そうして、切るなり、商品を取り置きするにも、お客様の名前もわからず、振り込みの通知がきても商品名が照合できないという失敗をしでかしていたことに気づいたのであった。
 もし、これを読んでいらしたら、お手数ですがご連絡をくださるか通信欄のミニコミの後に「7/31電話注文」とでも書いておいてください。誠に申し訳ございません。

●02.07.30 車内睡眠の法則
 製本のための紙を探したり、レジまわりで使っていたモニターを液晶に変えたことからカウンターを広くできることがわかり、そのための板を買ったり。
 ところで、私は毎日、片道約1時間電車通勤をしているのだが、ワイドショーをなかなか見ることができない私にとって電車の中吊りおよび前や左右の客のスポーツ新聞はワイドショーにかわる貴重な情報源である。芸能ゴシップやエロい記事など、隣の人が読んでいるとついつい、のぞき見してしまう。しかし、その際には、なるべく気配をさとられぬように、体や首を捻らずに眼球だけを最大限に動かす配慮を忘れぬようにしている。それでもばれたときはお互いに恥ずかしい。
 また、疲れていたり食後には電車の中でついついうたたねをしてしまうことがあるのだが、車中のうたたね風景を見ていると、うたたねした女性が隣の男性客にもたれていても、その女性が若い娘の場合まず男性は許容しているが、オヤジにオヤジがもたれかかっている場合、肩を貸している方のオヤジは間違いなく迷惑そうな表情をしており、かなり本気で肘鉄を食らわせていたり、わざといきなり身をひいて倒れさすなどかなり険悪な光景を何度か目にしてきた。世相も影響しているのかもしれない。
 私の経験では眠ってもたれてくる客はたいていはオヤジのように思うが、そうした場合、ちょっとした社会貢献、オヤジの安眠のためにとりあえず肩をかしてみたりする。「疲れているのね…袖すり合うも他生の縁なんてね」という気分。しかし、そんなボランティア精神も、のしかかる重みにしばらくするとくじけそうになる。重い…、なぜこんなに?
 そこで私は考え、次のような仮説を立てた。
眠っている間の人間の頭はおきているときの3倍の重さになる。おきている間、よほどの肩こりの人でもない限り、自分の頭の重さを意識することはまずあるまい。また、頭の重さが3倍になる睡眠中は、人は頭の重さだけでなく殆どのことを意識できなくなるので、このような事態になっているのにいっこうに気づかない。
 そして、電車という適温と心地よい振動をそなえた睡眠装置は、この事実の観察を可能にした。通常、人にもたれて眠るとうのは、子が母に対して、あるいは恋人同士が行う行為である。この場合、子を思う母の愛情が、あるいは色欲や妄想まみれの恋心が、正しい観察や体感を阻むのである。母親の愛情や恋人たちの妄想は感覚を鈍麻させこの重さを愛情の重ささに置き換えて受けとめてしまう。しかるに、そうした情を差し挟む余地のない電車で隣り合わせただけの他人の場合にこそ、我々の感覚は客観的で鋭利なものになる。オヤジの頭こそ、この客観性と体感を喚起する。
 ゆえにオヤジの頭を受けとめていう。睡眠中、人の頭は3倍の重さになる。この車内睡眠の法則を今後、世に問うてゆきたい。

●02.07.27 ネット霊園と現実逃避
 店に送られてきたフリーペーパーを帰りがけ無造作に鞄に入れ、電車の中などのちょっとした時間に読むことが多い。たまたま思い出して取り出した冊子を適当に開いて目に飛び込んできたのは、インターネット上の墓地の広告。
ペット霊園などはネット上にあることは知っていたが、人間までもついに…。しかも、緑の深い山、眼下に一望できる海など墓地の背景を選ぶことができたり、生前から契約しておけば故人となってからもサンプリングしておいた顔の画像を使って3Dで再現されて墓参者とリアルタイムチャットができたり、墓参者は宗派に合った読経や好みのお花を選ぶこともできるし、ネット上でさえも墓参がかなわない忙しい人のために代行読経などのサービスも受けられるという。ずいぶんといたれりつくせりで、はてそもそも墓参りって何のためにするものだっけ?と墓参りそのものまでがよくわからなくなりながら別のページに進むと、なんとこれは架空広告ばかりを集めた特集だとわかった。(maomao2002.july)
 そうか。スタニスワム・レムの架空文芸評論集「完全なる真空」みたい、あるいはクラフト・エヴィング商會。
 暑さから逃れたい、あれもやらなくちゃいけないこれもやらなくちゃいけない…とちょっと現実逃避したくなっていた折り、これらはどれも、電車の中や自室ですぐにできちゃう素敵な現実逃避かも…。
 それにしてもコンピュータの普及とユーザー世代の老齢化、あるいは住宅問題などなどが重なり、故人サイトなどができてもいいかもしれませんね。お年寄りが自叙伝をアップしておいたり、アルバム写真を取り込んだりして大切なものをデータ化、いずれ家族に残すなどというのも、雑誌で特集されるかも?

●02.07.25 銭湯行脚
 先日、阿佐ヶ谷のバー「よるのひるね」で、廃墟や銭湯の写真集を出している、写真家の大沼ショージさんを紹介された。撮る対象が枯れていたりしぶいのでてっきり、ご年輩の男性かと思っていたら、全く違って、若くてかわいい方だったので意外であった。
 大沼さんは銭湯本の監修をした町田忍さん(こちらは、正真正銘のおじさん?)に、「銭湯の主は昔気質の頑固な人が多いから、アポだの取材だのと言うと一方的に電話を切られて近づくこともできない。アポなしで乗り込んでサシで交渉した方がいい」とアドバイスをされたそうで、その言葉通り、全国各地の銭湯に乗り込んだのだという。が、行ってみたら銭湯があるべきところが更地になってしまっていたり、撮影する状態じゃないとのことで頑なに拒まれたりで、何軒かは空振りに終わったという。
 近所の銭湯も何軒かは廃業し、マンションになってしまったりして、健康ランドやスーパー銭湯ではない、昔ながらの銭湯が衰退の一途を辿っているのは誰しも生活の中で実感していると思うが、大沼さんが撮った銭湯写真集の背後には撮られることなく静かに消えていった銭湯が幾多もあることを知り、あの本の重さがずしりとくるのであった。 

●02.07.24 オリジナル袋への憧れ
 OLなどは有名ブランドの紙袋をいろいろ使いまわしているが、そうじゃなくても、気の利いた袋とか好きなお店の袋って、ちょっと物をあげたり貸すときに使ったり、サイドバッグ?感覚で利用したりする。私も高校生の頃、パイドパイパアーハウスの袋がとても好きだった。
 というわけで、タコシェもオリジナルの袋を作りたい、と言って久しかったのだが、先日、たまたま営業の方がいらして、ショップ袋なども扱っているというので、よく使う紙袋の大小とビニールの手提げ袋の見積もりをお願いしていた。
 ところが送られたきた見積もりを見ると、現在使っている既成の紙袋の何倍も高い。桁が違う。タコシェはミニコミ類など単価の低いものも扱っていて、100円や200円でも読み応えのあるものミニコミだってあるし、財布が寂しいときでもお買い物ができます、というのが売りだったりして、アイテム数的にはそういうものもかなりあるので、中身と袋のバランスもきわどい。
 というわけで、より安くオリジナルな袋を求めて、さらなるリサーチをすることに。袋ができる日はまだ先である。

●02.07.23 バーへ行く
 夜、仕事が終わってから、店員の濱岡と阿佐ヶ谷の駅近くにオープンしたバー「よるのひるね」へゆく。出版社の営業代行業を行っている門田さんがはじめたお店で、昼間は営業マン、夜間はマスターという形でお店をつとめるのだという。
 内部は学校の木製椅子や古い和室用の電球の傘などを使った昭和レトロな落ち着いた感じで、本棚やレコード棚もあって、自宅にいる感じに近いかもしれない。7月中は試運転期間ということで、知り合い筋に声をかけ、お披露目兼練習中だが、8月からは本格的に営業を開始するらしい。いずれは、客のリクエストに応じていろいろなカクテルもお出しできるようにします…というので、それが楽しみである。なじみのバー、自分だけの注文、なんかアダルトな世界。それを実現させてくれるのか、よるのひるね。アダルトじゃない値段でアダルト世界を満喫したい。

●02.07.22 営業トーク
 昨年は8月末の決算で苦労したので、今年は今から少しずつ準備。土曜日はじっくりと通販の収入の明細、送料、手数料などの内訳をチェックして税理士さんに出す一覧表を作る。書店の仕事は面白い本を置くことだとは思うが、こういうデスクワークを続けていると、「仕事」をしたという気分!4時間くらいやっただけで、もう一日働いたような気分。
 日曜日は再び製本のワークショップを受ける。
 月曜、出版社の営業の方が何名かみえる。暑い中でも出むいてくださる営業の方々にはほんとに頭がさがる。今は読書案内の本やテレビ番組も多いけど、この書店まわりの営業の人の売り文句、あるいはちょと客観的な自社製品へのコメントなどは、実はとても面白い。扱うものが本なだけに、ただオスのではなく、ときにはウィークポイントを認めつつ、面白さをアピールするなど、それぞれに話法がある。たとえば今日のは「俺、この内容は絶対いい!売れる!と思ったんですけど、思ったほど出足がよくなくて。表紙がちょっと地味だったかな…? でもやっぱりいいんですよ…」なんて言われると、とにかく内容を読んでみようと思うし、「この判型は不評の声もあるんですけど、中身はもう想像を絶する残酷さですから、この事実を知ったら…」なんて言われたら怖いもの見たさで読みたくなる。さらには「萌えは萌えなんですけど、読者はゲーマーだけじゃなく、一般の方、服飾系女子から進学校の男子まで意識してますから、決して自己完結はしてないつもりです」など編集コンセプトまで披露するケースも。
 みんな「見てくれや世間の評判をおいといて、とにかくこいつのよさをわかってやってよ」というサシの売りならではの、掛け値なしのよさを直接伝えたいという気持ちがにじみ出ているではありませんか。お店に普通に平積みされている本は、書評や広告といった形にならない営業マンたちの応援の言葉も背負っているのであった。

●02.07.19 荷物運び循環
 印刷所に寄ったり、額装用のマットをとりに行きながらタコシェへ。
印刷物は宅配してもらっておけばよかったのだが、配送料をケチって取りに行ったところ、大量で非常に重かったためにカートを購入し、配送料より高くついてしまった。こうなったら、あと数回はカート代を取り戻すために、今回のように大量な荷物を運ばなくてはカートを買った意味はない
。貧乏性ゆえに、お金を使い、荷物をたくさん運ぶ…。
 夜、佐伯俊男さんの展示の準備。

●02.07.18 店頭のアクシデント
 そういえば、先日、本屋に行ったときのこと。カウンターで女性店員に在庫の有無を確認しようと声を掛けた。ちょうど彼女は、包装用の袋の束を出そうとしていたところだったが、こちらを見て「はい、少々お待ちくださいませ」と言おうとした、そのとき、ちょっと手元から注意がそれたのか、袋を束ねていたゴムが勢いよくはずれて私の眉間を直撃した。
 ゴムなのでケガはなかったが「うっ、刺激的なご挨拶」という気分と同時に、「他意のないドジでも女性客の顔面直撃はまずいだろ、偶然でもどうしてそんなベタな漫画のようなドジができるのか?」というおかしさとが同時にわきあがったが、怒るようなことでもないし、かといって顔に物をぶつけられていきなり笑い出すのも不気味だろうし、とっさに「気にしないで、問題ありません」と冷静に言って話を進めようとしたのだが、当の店員が「も、申し訳ございません! 失礼いたしました お怪我はありませんか!?」と自分のしてしまったことに慌てるので、弱ってしまった。
 こんなときに驚いたり表情もかえない自分を、だいぶ‘おばさん’になってきたな…なんて思うけど、あの女性店員反応を見る限り、動揺しないだけでは、相手が動揺してしまい、まだまだ何かが足りない。このままでは中途半端な中年になってしまう。やはり自分が笑うんじゃなくて、相手を笑わせる域に達しないことには。こんなとき、彼女にかけるナイスな言葉とは…。輪ゴムの一撃に反省する私であった。

●02.07.17 営業する日々
  いつも営業でタコシェに来てくれていたTさんが、やってきて、「異動のため、編集に移るので、その挨拶がてらやって来ました」と言う。これまでも、出版企画を練り、私にもその内容を話して、「どう思います」と書店や読者からの反応をみるくらいアイデアを抱えていただけあって、「例の企画を最初に形にすることになると思います」とはやくも編集魂をみせる一方で、「仕事をしながら本屋をまわれたのが、できなくなっちゃうんですよね…」とちょっと残念そうでもある。
 自社の本の営業だけでなく、自身が読んだ面白い本のことを教えてくれたり、タコシェならこんなものを置いたらいいんじゃない、などとアドバイスをくれたり、単に熱心な営業マンというより、本好き・本屋好き・本に関するあれこれが好きといった感じで、だからこそ言うことにも客観性や説得力がある、というタイプで、いろいろなことを教えていただいた。
 残り少ない営業の日々、今日も両肩から荷物のたくさん入った丈夫な袋や鞄をさげて、その中から資料を出して見せてくれたり、自社のリーフレットを取り出す、サンタクロース状態である。Tさんが出したリーフレットの束は一番上の一冊の角が袋にこすれて丸まっていた。よく書店で本をとるとき、角がつぶれたものよりキレイなものを選んだりしがちだけれど、今日はそのつぶれた角が、あちこち歩き回って届けられた、という感じで嬉しく、私は一番上の一冊を自分用にもらってから店頭に出した。

●02.07.16 これも長距離走者の孤独?
 再び、台風接近。しかし、というか、だからこそ、あえて医者へ行ったり食事をしに出たり。こういう日はすいているし、サービスもよいのだから多少濡れても出かけるのだ。案の定、患者が少なかったのか、クリニックの受付の女性もまるで私を待っていたかのようであった。しかし、自分の店も台風だとやはり客足がにぶる…。
 この時期、周囲でも体調を崩す人が多いし、精神的に不安定になる人もいるよう。フリーペーパー「精神病新聞」を届けてくれるKさんも、最新号では薬の飲み過ぎで殆ど自殺未遂になってしまったことを書かれていた(詳しくは店頭にある同紙で読んでみてください)。気持ちの波もある中で、通算して30号以上、一人で定期的によく活動を続けてらしたと思う。発行したフリーペーパーをまとめて本を作られたり、雑誌でとりあげられたりという新展開を見るのは嬉しいし、「よかったですね」と普通に声をかけることができるけど、逆に制作者の方のスランプとなると、「がんばってください」なんていうのはほんとに口先だけってかんじだし、何も力になれず、ただこのまま終わらないで…とひそかに祈るばかり。もちろん、これは3号雑誌には抱きようのない気持ちなわけで、続けることのたいへんさや知らず知らずに深まっている親しみを改めて感じる。100メートル競走は単純に速さを競う競技だけど、マラソンの場合見ているうちにいろいろなドラマを共有してしまうのと似ている? 長距離走者の孤独に沿道からどうやって向き合えるのでしょうか?

●02.07.15 なにげなくてすごい漫画たち
 印刷所に画像データを置いてからタコシェへ。先週末に藤本和也さんの漫画「ふらふらふらり第二部」が入荷した。この本を出しているのは、餅屋ブックスという、編集、デザイン、営業と殆ど一人で切り盛りしているような小さなレーベル。同人誌などに発表した自分の作品をまとめることもせず、あまりに欲のない藤本さんを見ていて「それなら、えい」と、殆ど藤本さんの本を出すためだけに立ち上げられた個人出版なのである。最初の「ふらふらふらり」の立ち上げのときはオンデマンド印刷で、採算は度外視して様子を見ながら数十部ずつ作っていたのが、だんだんに評判になって、追加も相次ぎ三冊目の今回は体裁も立派になり、まとめて印刷に出すまでに成長。藤本さんの認知が高まるのと一緒に確実に本も充実、藤本さんも同人誌から商業誌と幅広いフィールドで活動している。
 同じように、レベルの高いコミックを発行している作家さん、レーベルはほかにもあって、毎回の自費出版が人気の山川直人さん、やさしく細やかな視点とタッチで日常を描きながら、そこに潜む綻びを見逃さないような鋭さを隠し持つこうの史代さん、「けだもののように」という青春大河ドラマをずっと描き続ける渋蔵さん、この前までタコシェで展示を行っていた市場大介さんなどなどがいらっしゃる。コミックの棚の一角にそうした出版物もあるので、なにげなくてすごい作品に触れてみてください。

●02.07.13 うんといっぱい運ぶ
 8月の丸尾末広さんの展示やグッズ制作のために、お宅に作品をあずかりに伺う。本やグッズなどを含めてお預かりしたために、手提げ袋や肩掛け鞄など手荷物はすべてパツパツ。嬉しい反面、しまった! コロコロのついたカートを持ってくるんだった…と後悔。すぐに、雨が降った場合を考えて防水用に持ってきたビニールの袋のとってが破れてたりして、苦しい体勢に。重さのせいでで歩く速度はすごいゆっくり。全く自分勝手ではあるが、こういうときに避けて通ろうとせずにぶつかって文句を言う通行人がうらめしい。反射的によけられないくらいに荷物が重いから。
 店まで無事に運ぶと検品。店員も今回はどんなものをお預かりしたのかと一緒に見たりして、おみやげをみんなで開くような雰囲気である。

●02.07.12 段ボールを組み立てる
 ギャラリーや出版社に寄りながらタコシェへ。
 店に出て、通販のための荷造り。これには結構時間がかかる。本だけ数冊、という場合は、所定の封筒に入れればよいのだが、ある程度、多くなると、箱が必要になってくる。本の形によって、あるいは本以外のものもあるから、その形状によって、箱の形は違ってくるのだが、いろいろな形や重さを想定して箱をストックするのもたいへんなので、我々は、出版社などから本を入れて送られてきた箱の適当なものを再利用したり、他の店が段ボール専用回収場所に出した大量の箱から適当なものをみつくろって使う。(新品じゃなくてすみません)。それでもジャストサイズじゃないときは、箱をカットして組み立て直してちょうどよい大きさにする。(そうすることによって中で荷物が動いていたまないようにするのと、重量を最小限にするため)しかし、この工作が結構、手間で、キッチリ作ろうとするあまり、10分くらいかけて組み立てたはいいが、いざ本を入れようとしたとき、ビミョーに小さくて使いものにならないときがあったりしてすごく悔しい思いをする。また、まさにピッタリの箱ができたと喜んだのもつかのま、検品して、もう一冊入れなくてはいけなかったと気づいて、その一冊分がちょうど入らなくてやはり悔しい思いをしたり。今日も段ボールと格闘した。

●02.07.11 刑務所の中と杉並北尾堂
 タコシェにあるモニターのひとつの調子が悪く、全体が青みがかって元に戻らないので、ついに新しいものを購入しようと思い、とりあえず秋葉原でざっと品物を見る。修理をすれば直るらしいのだが、何週間か預けなくてはならないうえに、結構な金額がかかるので、代替えのモニターがないのなら新しいものを買うしかないと決意した次第であるが、OA機器の場合、勢いだけで買って失敗することがあるので、現物を見たり、こちらの機種やシステムを全部書き出したりと、それなりの準備が必要である。
 以前、よく調べずにプリンタを購入し、ネットワークに対応しておらずに困ったことがあった。そのときは、購入した売り場に問い合わせ、なんとかネットワークで使える裏技があるだろうという助言を逆手にとり、その方法をしつこく電話で尋ねるという方法を重ねた結果、売り場の店員が根負けし別の機種と交換してもらえることになった…。当時の店員・津川さんと交代で電話をすること数時間後、交換の声を聞いたときは、二人で喜びを分かちあったものだが、その身勝手な粘り勝ちをイトーは苦々しい表情で眺めていたものであった。そういう苦い失敗を繰り返さないために、以後、慎重に選ぶことにしたのである。
 さて、モニターを見て、本を仕入れてからタコシェに出て、いくつかの連絡をとったりして後、早めに店を出て、「刑務所の中」の試写会へ。花輪和一さんの漫画をそのまま映画化したこの作品は、来年のお正月に公開(お正月からムショ!)予定だが、劇的なくらいに何もおこらないムショ生活を贅沢に映像化していて楽しかった。ムショの中では、たまに出るパンや甘い物がとてつもない贅沢であったり、おしょうゆごはんがおいしかったり、窓の外の景色が美しかったり。とるにたりない小さな美や贅沢を絶好のロケーションやスタッフで描く贅沢…。会場は立ち見がでるほどの盛況であった。
 試写の後、ふたたび中央線沿線に戻って、西荻の杉並北尾堂の期間限定ショップへ。ライターの平林享子さんやフリーペーパー「カエルブンゲイ」の新井さん・米光さんご夫妻と合流。ふだんはオンラインショップの杉並北尾堂が夏の3ヶ月間だけ夜営業のカフェ書店を営業しているのだ。お茶をしながらモンド系の古書を手にとり、ときには店主・北尾トロ氏や他のお客さんと雑談に花をさかせる、なんともいえない雰囲気の店。店主の北尾さん自らがカウンターの中に立ち、お茶を淹れ、お客さんにさりげなく気を配るマスターぶりに感心。きっとマスターをしたってリピーターになるお客さんも多いにちがいない。

●02.07.10 取材に遅刻
 開店前、新しく創刊されるweb関係の雑誌の取材をお受けする。一昨日、取材の件でお電話をいただいた際、「早い時間ですと、私が遅刻をしそうです」と申し上げると「ハハ、そしたらお店の前で待っていますよ」と編集の方が答えられたので、寝坊はしなかったものの、一通りの朝の用事をしていたら1時間があったいう間に経っており、戸締まり火の元などを何度も見直したりしているうちに遅れ気味に出発、10分ほど遅刻して到着すると果たして取材の方はいらっしゃらなかった。そこで、開店してしばし待ち、おもむろに電話をして「あの…、取材、今日でなかったでしたっけ…?」と尋ねたところ「はい、そのつもりでしたが、誰もいらっしゃらなかったので…」との返事。さすがに「でも店の前で待っていてくださるはずでは」とは言えずに「すみません! 私が遅刻いたしました」。取材の方が戻ってらして、お話をした。あれは冗談だったのか…。私は冗談でなく本気で訴えていたのだが。

●02.07.09 80年代以降の文学、舞台
 雨、そして暑さ…車もなく自力で本を仕入れて運ぶ私にとってつらい季節である。温暖化、勘弁して。
 そういえば、あんパンと牛乳を一緒に食べるとおいしかったりするが、最近、仲俣暁夫「ポスト・ムラカミの日本文学」(朝日出版社)と「舞台芸術1」(京都造形芸術大学舞台芸術センター)を続けて読んで、80年代以降の文学と舞台芸術の摺り合わせをすることができた。例えば、90年以降の起承転結やあるメッセージや結論に向かって物語を作るのでなく、いま自分がいるここを描くという姿勢は文学では保坂和志あたりに顕著であり、演劇ではいわゆる静かな演劇と言われた平田オリザや宮沢章夫あたりで意識的に行われていたこと。そして、21世紀…、小説の中でも、舞踊の中でも暴力が様々な形で描かれようとしていること…。

●02.07.08 パンダラブーが美しい!?
 喪服サイン会、そして翌日の親戚の結婚式と連続セレモニーをクリアして出勤。
 8月に出版予定の「パンダラブー」(青林工藝舎)のため作者の松本正彦先生の対談が組まれ、先生や編集、構成の面々の待ち合わせ場所がタコシェであっったために、先生がご来店。雑誌・アックスのために描いたカラーの最新パンダラブーイラストもお持ちになり、絵を広げてみんなに見せてくださったが、先生がおっしゃるには、その昔、先輩から叩き込まれた古い技法で色を塗ったとのこと。ディテールの塗りの細やかさや深みは、どこか描き崩したような、あの不細工なパンダちゃんキャラ・パンダラブーから思い及ばぬ美しさ。絵本の挿絵のような、きれいな水彩画を見ているよう。よく、印刷されたものと原画とのニュアンスの違いに驚いたり、意外に思ったりするけれど、今日のパンダラブーの絵もそのひとつ。

●02.07.06 駕籠さん喪服サイン会当日
 駕籠真太郎氏、喪服サイン会当日。ドレスコード:喪服で、どれくらいお客様にいらしていただけるか…と思っていたが、梅雨どきの蒸し暑さにかかわらず想像以上に多くの方に喪服でいらしていただき、ありがとうございました! 積極的に駕籠ワールドに参加して、楽しんでいただけて、感激です。詳細はイベントページで後から写真入りでご紹介するとして、先にサイン会のメイキング編を。
 前日5日、私はタコシェに行く前に和菓子屋に立ち寄り、店員さんと相談して涼しげなお菓子を選び竹皮で編んだかごに入れた詰め合わせを作ってもらい、笹を購入してから出社。お向かいと両隣のお店に、チラシを持参し翌日のサイン会の趣旨を説明し、お菓子を渡してご挨拶。妙な儀式や悪ふざけでないことを申し上げると、皆さんからは、「面白いことをやるのね」などと言っていただけた。
 当日は喪服の用意に手間取って、結局、家にあったやけに大きめなワンピースの喪服を持参して20分前に到着。駕籠さんと太田出版の方はすでにいらしていて、撮影や舞台用の道具屋さんから借りてきた骨壺などをてきぱきと設置してくださった。案内の方も一名、外に出て、店に来る途中の道で葬儀気分をもりあげる演出までしてくださった。太田出版の方々は、今週はずっと会社の研修のため、フィリピンの山奥のバナナ農園にいたそうで、担当編集のTさんも、不慣れな農村体験にまけじと食事をたくさん食べて体力を養おうとしたらしいのだが、逆に食べ慣れないものを大量にとったせいか体調を崩して帰国したばかりとあって、お気の毒ではあるが、却って憔悴した遺族の雰囲気がよく出ていた。弱った体で細々と気配りしたり挨拶する様はまさに御遺族であった…。
 お客様に順番にお焼香していただく一方で、あまり煙るとスプリンクラーが作動して、お客様も我々も商品も水浸しになりかねないので、私はお線香をまびいたり、空調に気をつけたりしつつ、お並びいただいているお客様にときどきサインの手順の説明などを行う。多くのお客様にいらしていただいたのと、駕籠さんの丁寧な経文入りサインとで、予定時間を超えてサイン会が行われ、ずいぶんと長い時間並んでお待ちいただいた方もいらして、本当にお疲れ様でした。いろいろと不手際もございましたが、おつきあいくださりありがとうございました。
 5時すぎから、場所を近所の居酒屋に移して、故人である駕籠さんを囲んでの「偲ぶ会」も開かれたが、故人の率いる喪服集団を居酒屋さんはどう思ったことか?

●02.07.05 猫の洪水と葬式×七夕
 早起きして、老齢の飼い猫(18才、人間なら90近く)を、定期診察のため獣医に連れてゆくが、行きのタクシーの中で、布バッグに入れて膝の上に乗せていたら、大洪水をおこしてしまった。ちょっと、猫が熱っぽいな、ここんとこ食欲が落ちていたのは熱のせい?、なんて思っていたら、熱ではなく洪水にやられていたのだった。タクシーは無事であったが、私の股間は水浸しになり、これではまるで私が漏らしたみたいな…。医院で、先生に手伝ってもらって猫を拭いたが、私の方はそのまま、お漏らし状態で帰りのバスや電車に乗る。バレバレだったかなぁ。しかし、奴は電車を降りると、主人に気兼ねすることなく、バッグから半身を乗り出し微風にふかれ、駅から私のこぐ自転車の旅を気持ちよさそうに堪能していた。
 明日は駕籠真太郎さんの喪服サイン会。できるだけお客様にお喜びいただくためには、どうしたらいいか…? 通りいっぺんの葬式じゃ物足りない? と電車の中で考えて、思いついたのは、七夕とのドッキングであった。結婚式を七夕にするという人はいるが、葬式の場合、なかなか狙えるものではない。その奇跡をタコシェで実現しよう。きっと、ファンシーな七夕イヴと葬儀のドッキングはこの時期まさに鰻×梅干の食い合わせのように刺激的。さっそく花屋に行き笹を購入してからタコシェへ。
 夜、笹を入口にアーチ状に設置して、駕籠氏の絵を展示するように店員に頼んで、神保町で行われた、「神保町「書肆アクセス」半畳日記」の発行記念の打ち上げに出席。著者で書肆アクセスの店員、畠中理恵子さんと黒沢説子さんの人徳を反映して、多くの人たちが集まり、出版を祝う。
 同書は、90年代末から2001年にかけて、お二人の日々の仕事ぶりや生活を綴りながら、その背景には、出版不況の影、神保町が再開発の波にのまれて古くからの店がなくなり様変わりしてゆく過程が、描かれている。
 しかし、会場には同じ神保町の書店の方々や周辺の出版者の方々が多くいらして、彼女たちを祝福し、歓談が行われていたので、中野にポッと店を構えたタコシェはローカルというかはぐれものみたいだなぁ、と創業9年目にしてはじめて気づいた(気づくのが遅い)。
 出版も書店も、神保町、東京というロケーションも疑問にふされる現在、神保町もその他の地域も出版や書籍販売を問い直す時期にきている。

●02.07.04 ただ歩く
 本を求めて、神田を歩くがほしいものや掘り出しものがみつからなかった一日。そしてこういう日に限って、少し前に仕入れた本がゾッキに流れているのを発見して、「チクショー」てな気分になったりもする。獲物を探して無駄にサバンナを走り回った獣の気分。次こそ、ここなら、と思って、やけになって問屋や書店をハシゴするのは、そろそろ出るんじゃないか…と、ズルズル何万円もつぎこんでしまうパチンカーにも似ている。でもって戦果もないのに、暑さに負けて、喫茶店に入ってお茶してしまう体たらく。何もない日とは、仕事に集中してない日のこともあるけれど、働いているのに形にならない、という日のこともある。

●02.07.03 ホームページが作れない
 なぜだか、ホームページを作成するアプリケーションだけが壊れてしまい、開くことができなくなって、とりあえず、データをコピーして、自宅で作成・更新の作業。そろそろ、すべてを一新した方がいい、ということ? しばらくは、更新が真夜中になるかもしれません。
 駕籠慎太郎さんの喪服サイン会、初めてのセレモニー形式ゆえに、いろいろと考える。若いお客様の中には「喪服って、どの程度のものならいいんですか…?」などとお尋ねの方もいらっしゃる。そうだよね、学生じゃ、持ってなくても当たり前だものね。よーし、学生さんは学生服でも可だ。若い方は無理せず、黒を基調とした喪の心を現すコスチュームでおいでください。私たちも、いいお式だった…、と言っていただけるよう、ご用意します。

●02.07.02 現代詩
 お客さまから問い合わせを受けたことから、日本の現代詩について少し調べた。
 私自身は80年代には、結構、詩集を買ったり、詩人が出演するイベントに行ったりしていたのだが、気がつくと、最近、すっかり現代詩を読まなくなっていたのであった。
 確かに、ここのとろこ、80年代のように新人がたくさん現れるとか、批評家や小説家にまじって詩人が参加するイベントが組まれるといった目立った動きが少ないのは否めないのだが、詩や短歌ならでは、という面白い動きもあって、それはwebだった。
 小説などと違って単純に文字数が少ないので収録しやすい、という物理的な理由もあり、中には本のように書体や行間を選んで作った画像を見せる人もいる。 
 これまでも、詩集や歌集はいろいろ出版されているが、出版社から出ているものであっても、大部分は作家が出資して作っているか殆どを自分で買い取るかしていたのが実状だから、若い詩人や歌人が、まずwebに表現の場を求めるのもごく自然に思える。
 もちろん、多くの作家にとってそれはいずれ本という形に行き着くためのプロセスかもしれないが、詩や短歌というジャンルならではの面白い傾向に思えた。
 さらに、一方では、朗読(詩のボクシング、オープン・マイク)の、パフォーマンスも増えて、詩の世界は、出版、ライン、実演と表現方法が分散されつつ漂流中といった状態で、現象面では面白い段階にあるかんじ。
 近いうちに本やサイトをリストアップして、フェアもやってみたい。

●02.07.01 ボーイズ
 昨日、30日は内澤旬子さんの製本のワークショップに出て洋本の綴じについて簡単な実習を受ける。そのまま千駄木に出て往来堂書店で買い物、谷中を抜けて日暮里から帰途につく。
 昨日、お話をした、書店関係の方たちによると、一般書店では、実際に売れていても、当店のベスト10にカウントされない隠れたベストセラーがあるという。それは「ボーイズ」という、美少年同性愛小説の文庫であるらしい。けばけばしい色の帯文のはげしいあおり文句を観るだけでもちょっと恥ずかしい世界であるが、そうしたものを女性客たちがまとめて購入するのだという。かつて「ジュネ」が担っていた耽美美少年世界を、よりカジュアルにハードに進化させたボーイズ系。中には書店員美少年同性愛ものもあり、ボーイズはあらゆる職業、あらゆる局面に入り込んでいるようだが、そのシチュエーションにひかれて読んだ同業者によると、書店の裏の仕事までリアルに描いているので、その面でも鑑賞に値するという。…もしかして、それもまた普通の女子書店員や元書店員が書いてたりするのであろうか?
 今日は、週末に予定されている駕籠さんの喪服サイン会のために喪服を見にいったが、思いの外、高価なのを知り驚く。洋服の青山などでスーツが1万円で買えるのだから、喪服も1万円くらい、という心づもりで出かけたら、スーパーの吊しでも5万円くらいであった…。メーカー直販卸売りの通販という手もあるが、今週末だと間に合わないかもしれないきわどいタイミングなのだ。やっぱり喪服は、平時にちゃんと用意しておいた方がいい、ということですね。



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